Doll 26-Missing
「お前、何してくれたんだよ」
タスクは右目が潰れ血塗れだった。
「何とか言えよ、セツナ!」
躊躇いなく、タスクの剣はセツナを貫く。
セツナは反撃どころか、傷口を押さえる事もしない。
そんな彼に対して何度も何度も剣を貫く、タスク。
「もう、やめろ。セツナは──」
「クロノ。好きにさせておけ……時間は僅かしかない」
「へェ。でも楽に殺してやらねェ!」
「この命……お前に渡すつもりはない、そう言っただろう……」
セツナは殺気に満ちた眼差しをタスクに向ける。
「意味、分かんねェ。なんで手に入れた力を自分に使わねェの?」
「分かるだろ……貴様になら……」
その言葉にタスクの表情が強張る。
「わ、わっかんねェよ!!」
「……嘘、だな。顔に出ている」
「──ッ」
タスクは壁を思い切り殴ると、消えた。
「そんじゃ、アタイらも行くか」
「あぁ」
「後悔すんなよ、セツナ」
此方に向かってくるハルクの姿を確認して、クロノとゲッカは静かに消えた。
「……後悔、か」
セツナはラセンを見つめて微笑む。
「セツナ! ラセンは──」
言い掛けて、ハッとする。
「セツナ……お前……」
セツナの真っ白な服は、真っ赤に染まっていた。
「ハルク。そんな顔をするな。僕は今……幸せに満ちている……」
「いいのかよ、それで」
「構わないさ……悔いがないと言ったら嘘になるが」
「お前って、ホント……昔っから……ッ」
セツナが力なく倒れそうになるのを、ハルクが支える。
傷だらけのセツナだが、表情は今までの彼の中で一番輝いていて、まるで──
──ハルクの頬を涙か静かに伝い落ちた。
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