Doll 25-Sibling




いち早く、私の手を引いたのは……ハルクだった。
私はAlice Glassをぎゅっと抱き締める。


「……心配すんな」
「……っ」
「ラセン、まだ起きちゃダメ──」
「寝てる場合じゃないっての」
「そうそう。起きなよ、ラセン。届けモノ、ご苦労さま」


タスクさんの声がしたと思った瞬間、ラセンの顔が苦痛に歪む──


「あがッ……」
「ラセン!」
「おっと。動くなよ」


ラセンを人質と言わんばかりに捕らえる、タスクさん……


「お前、やっぱり──」
「オレっちは最初(はな)っから、リコリスの為にしか動かないんだよ。今も昔も、これからもな」


タスクさんは一瞬、寂しそうな表情を見せた。


「……っ……踊らされてたのかよ」
「オレっちがさ、素直にどーぞって受け取って貰えると思う?」
「……バカだな、あたし……」
「そんなこと、ない! 私達だって探してた」
「アリス……」
「必死に守って、届けてくれた。それだけだよ」
「ホントにありがとうな、ラセン。お礼に一撃では殺らないよ」
「かは……っ」


ラセンの身体が宙に舞う。
タスクさんの攻撃が全く見えなかった──


「何なんだよ、テメェ!……俺以上に鬼畜──」
「ギャラリーは黙ってな」


ハルクは、ラセンの前に立って言う。


「黙るかよ! 今度は──」
「前と違うって?……どこがだよ、ハルク」


タスクさんはハルクを片手で地面に叩きつけた。
次にリゼルまでも──

やっぱりタスクさんは強い……
きっと、あの日よりも強くなっている。


「姉さ……アリス! 逃げよう」
「で、でも──」
「そうだ! リクと行け!」


Alice Glassを抱き締め、ハルクを見る。
ハルクはタスクさんの攻撃を交わすのが精一杯だった。


「僕達がいると、足手まといになる」

リクに言われ、ハッとする。
その通りだ……私がいたって何も出来ない。
それどころか、皆が闘いに集中出来ない……


「無駄だよ」


タスクさんが低く、囁くように言った。


「初めまして、ですわね」


ドアの前には見知らぬ女性がいた。


「……エリーゼと申します」


彼女は満面の笑みで私達に自己紹介をした。
……ただ、それだけで何かを……攻撃してくる気配はない。

私達も動くに動けない──


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