Doll 2-Words that I wanted to convey




図書室を出ると、シリアが立っていた。
私を見たシリアは息を荒げ、近付いてくる。

その瞳は光を失っていた──


「リクから出てくる言葉は……お姉さんの名前ばかりなの……」
「……私?」
「だから私、悔しくて悔しくて……」


シリアは泣き真似をしながら私を見る。


「写真をバラ撒いちゃったの……」


シリアが信じられない事を言った──

瞬間……
クラスメイトの声が蘇る。
痛々しい言葉の先、辿りついたのは──

“信じられない”

クラリスに向けた私の言葉だった……
それがどんなに突き刺さる言葉なのか、私は知っていたのに……


「辛かった?  苦しかった?……でも私も同じだった」


シリアは薄ら笑いを浮かべる。


「どうして……こんな事……」
「……リクを奪おうとするからだよ」


そう言ってシリアはナイフを取り出して舐める。

その姿に背筋が凍りつく……


「アンタがいなくなれば、リクは名前を呼んでくれる……」


そう言ったシリアの瞳には涙が溜まっていた。


「本当にそう……思っているの?」


私の言葉にシリアが一瞬、動揺したように見えた。


「私がいなくなっても何も変わらないと思う」


更に揺さぶりを掛けようとしたが逆効果だった。

シリアは涙を拭ってナイフを構える。


「お願いだから消えて」


ザッザッザ──
シリアは、ジリジリと距離を詰めてくる。
私の足は自然に後退る。


「…………」


背中が壁につく。
縮まっていく距離が呼吸さえも奪っていくように思えた。


シリアは躊躇う事なく私の首を掴んだ。
その力は尋常ではなかった……


「うぐぅ……」
「……サヨウナラ」


シリアがナイフを振り上げる。

もうダメだ──

私は目を強く瞑った。


「そいつにそれ以上、触るんじゃねェ」


薄っすら目を開ける……
そこには──


「……ハルク」


ハルクがシリアを突き飛ばした。


「かは……っ」


シリアは壁に背中をぶつけて倒れて意識を失う。


「やる時はやるんだな、お前」
「え?……何の話?」
「自ら囮になるとは、感心したぜ」
「囮?」


私はキョトンとしながらハルクを見る。


「おいおい、マジかよ」
「も、もしかして……“心-イノチ-”を食べられかけてたのって……」
「ああ。コイツだ」
「……どう、するの?」


私は恐る恐る、ハルクに聞いた。


「まあ、見てろ」


ハルクはニヤリと笑ってシリアに近付く。

シリアの額に手を当てて目を閉じる。


「……まだ間に合うな」


そう言ってハルクはシリアの心臓に手を当てて指を弾いた。



.
20/23ページ
スキ