Doll 25-Sibling
──月が翳る。
「…………っハァ」
ハルクは顔の汗を拭い、呼吸を整える。
「おい、ハルク……」
「リゼル、か。今日は相手しねェからな」
「お、おう……」
「何だよ、その面は」
「……少し調べたんだけどよ」
「調べた? どういうつも──」
「テメェ……つ、悪阻なのか?」
リゼルは真剣な顔で言った。
「馬鹿か、お前! 何でオレが!」
「嘔吐もしてたじゃねーか!」
「あれは、だな……って、見てたのかよ」
「……偶然な」
「そうか……力が暴走するんだよ」
「暴走だあ?」
「ったく、嫌な予感がする……」
葉風が立つ──
「オイ……アリス、一人じゃねーだろな?」
リゼルの言葉にハルクの顔色が変わる。
「おい、急ぐぞ」
「テメェに言われなくてもな」
二人は夜の闇に向かって走り出す──
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