Doll 2-Words that I wanted to convey
「ただいま」
リクが帰って来てるかもしれない……
私は台所を抜け、部屋へ続く階段を上がろうとした。
その時だった。
「アリス」
「パパ、ただいま──」
「手紙が来てるよ」
「手紙?」
パパから封筒を受け取る。
差出人は書かれていない。
封筒の封を切る。
中には写真が3枚入っていた。
「何……これ……」
一枚はリゼルが持っていたものと同じだった。
2枚目は私とハルクが抱き合っている写真。
Arice・Dollを探していた時のものだった。
そして、3枚目。
と、手が震えて思うように動かない……
「どうかしたのか?」
「う、ううん。私、変な顔で写真に写ってたからビックリしちゃって……」
「どれどれ~、俺にも見せてくれないか?」
パパが写真に手を伸ばす。
「ダメ! 絶対にダメ!!」
私は咄嗟にパパの手を振り払う。
その瞬間、3枚目の写真が落ちた。
「!」
私は写真を見て驚愕する。
「アリス、大丈夫か?」
「もうやめてよ!!」
私は慌てて写真を拾って、階段を駆け上がる。
ガチャ──
部屋に入って直ぐドアに鍵をかけた。
「…………ハァ…………ハァ……」
私は乱れた呼吸を整え、再び写真を見る。
3枚目の写真は、血塗れのスージィが私を見つめているものだった。
そう、スージィが煙になる寸前のもの……
「何よこれ……」
私は震える手で写真を破る。
何度も何度も、何が写っているか分からないくらいに破った。
そしてゴミ箱に捨てた。
「私に何の恨みがあるって言うの……?」
私は唇を噛んで、拳を強く握った。
と、風が吹き抜ける──
「Arice・Doll……」
声にハッとして顔を上げる。
そこにはハルクが居た。
「説明してよ、ハルク!」
「動いてたんだよ、アイツ……Arice・Dollがよ」
「え?……それって私達が感じた日からって事?」
「もっと前かもな」
「じゃあ、いつから?」
「知るかよ! 知ってたらどうにかしてるだろ!」
「ご、ごめん」
ハルクは酷く荒れていた。
「……でもそれと写真とは関係──」
「誰かの“心-イノチ-”が食われかけてんだよ!!」
ふと、3枚目の写真が脳裏を過ぎる。
「……誰……の?」
「知らねーってんだろ!」
「ご、ごめん……」
「…………クソ……」
ハルクが壁を思い切り殴る。
手からは血が流れていく。
私はハンカチで押さえた。
ハンカチ越しにハルクの熱が伝わってくる──
「……私、どうすればいいの?」
自然に言葉が出ていた。
「…………様子を見て、Arice・Dollかどうかを見極める」
「見極めるって、どうやって?」
ハルクは私に耳打ちする。
「うん……」
暫くすると、ハルクは窓から何処かに行ってしまった。
ハルクはArice・Dollの仲間じゃない。
根拠は無いけれど、そう思えた。
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