Doll 24-Poison needle
放課後まで待てず、登校したその足で図書館に寄る。
「うーん……やっぱりない」
夢だったのかな……
リクとの出来事がフラッシュバックする。
ドンッ──
「きゃ、ごめんなさ──」
「お嬢さん、探し物でも?」
「い、いえ。大丈夫です」
「一緒に探してあげたいんだけど、ゴメンね。急いで職員室に行かなくちゃいけないんだ」
「えっと──」
「カルロ」
黒色に銀がかった短髪。
左耳に銀のピアスが4つ、右耳に大きなピアスが1つ。
スーツで整った服。
一番印象的なのは、黒い瞳──
吸い込まれそうなくらい、綺麗で……
「ナンパしたいとこだけど、今日は挨拶だけ……ね。また直ぐに会えるよ、お嬢さん」
「なっ……」
すれ違い際、金木犀のような甘い香りがした。
一瞬、匂いがきつく感じて足元がふらついてしまった。
「気を付けて」
彼との距離が一気に縮まる。
「あ、ありがとうございます」
「ふふ、どうも」
手の甲に柔らかいものが触れた。
視線を落とすと、手の甲にキスをされていた。
「……っ」
「あ、失礼。つい癖で」
彼は悪びれる様子もなく、踵を返した。
「またね、お嬢さん」
扉が閉まると、彼は一言呟いた。
「……っはぁ、緊張するなぁ……ったく」
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