Doll 23-Clock




リビングに野菜を切る包丁の音が響き渡る。


「てて……っ」
「リク、どうかした?」


アリスは包丁の手を休め、ソファーで休むリクの顔を覗き込む。


「……なんだかお腹の調子が悪くて。昼、ちょっと食べ過ぎたかな」


そう言いながら、リクはお腹をさする。


「育ち盛りだからって作りすぎだよね」
「作りすぎってことはないよ。本当によくお腹空くんだよね。姉さんの料理が美味しいし、つい食べすぎちゃうのはあるんだけどね」
「もう、リクってば……」


無邪気に笑うリクにアリスはつられて笑う。
次第にリクの表情が曇っていく──


「ゴメンね……やっぱり、今日は夜ご飯止めとくよ」
「無理しない方がいいよ。もうすぐママが帰ってくる時間だし、念の為──」
「ありがとう、姉さん。少し部屋で休むね」


そういえば、リク。
まだ帰ってきてから日が浅いんだよね。
気持ちの整理どころか、疲れだって……


「リク……無理してたんだろうな」
「あいつがどうしたって?」
「ハルク? どこ行って──」
「どこだっていいだろ。それよか、あいつが何だって?」
「……なんでもない」
「あっそ」


なんでだろう……
ハルクと顔、合わせにくい……



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