Doll 23-Clock
私は今日も放課後、図書館に寄った。
本棚に手を伸ばすが、その手は直ぐに止まる。
「あ……れ?」
何度も指を走らせるも、やっぱり本は見付からない。
「確か、ここにあったはずなんだけど……」
──昨日あった本がない。
心がざわつく……嫌な予感がする。
「姉さん? 今日もここにいたんだ」
「リク……どうしたの?」
「いると思って。もしかして、今日も探してくれてたの?」
「ううん、今日は違うの。色んな国の料理、気になっちゃって……」
咄嗟の嘘。
……なんで本当のこと言えないんだろう。
「僕にまた新しい手料理、振る舞ってくれるんだね」
──ドキッとした。
本当に本当に、リクがいる──
「……そのうちね」
「絶対だよ」
「うん」
誰もいない図書館。
リクに抱き締められて──
そっと、唇が重なった。
「……クリスマス」
「え?」
「まだ先の話だけど……出掛けよう、一緒に」
「リク──」
「憧れだったんだ」
それは、私もだよ──
でも……その日は──
「どんなに小さくてもいい。二人だけのツリー、見付けに行こうよ」
「…………なんかお伽話みたい」
「……誰にも邪魔されたくないから、伝えておこうかなって……こんなこと言うのはバチ当たるかな」
「あ、当たるわけないよ! 今までが──」
言い掛けて言葉に詰まってしまう。
「過去じゃないよ、姉さん。今……生きてるんだ」
「うん……」
「…………好きだよ、姉さ──……アリス」
再び、静かに……唇が重なった。
“あの日”私は普通を装えるのかな──
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