Doll 2-Words that I wanted to convey




「クラリス!」


私は更衣室から出てきたクラリスを呼び止める。


「……ア……リス?」


クラリスは一瞬、戸惑った表情を見せたが笑顔を取り繕った。


「ゴメンね……昨日は突然の事でビックリしちゃって……」


そう言ったクラリスの目の下にもクマが出来ていた。

クラリスも寝てないんだ……


「私こそ、ごめんね。でもハルクとは本当に何も──」
「考えてみれば分かる事だったのにね……私、無神経だった」
「え?」
「私、アリス達の事……応援するから」
「違──」


リーンゴーン……

チャイムが私の声を掻き消した。


「ほら、授業が始まるよ!」


私の手を取って走るクラリスは、いつものクラリスだった。
明るくて笑顔が素敵な──

だから尚更、ハルクとは何も無いなんて言えなかった。
また気まずくなるのも嫌だから、時間に全てを委ねたい……


私は小さく頷いて自分の足で走る。
と、フェンスの向こう側に人影が見えた。


「シリア……?」
シリアがフェンス越しに私を見ていた。
そして、シリアはゆっくり口を動かした。

でも何を言っているのかは聞こえなかった──



.
12/23ページ
スキ