Doll 22-Shadow
「キャベツとひき肉と……」
「コンソメもいるよね?」
「それと、人参と」
「持つよ、貸して」
リクの手が一瞬、触れた。
私の心臓はまた激しく波打ちはじめる。
……やっぱり、リクが好き──
「好きだな、姉さんのロールキャベツ」
「え、あ……久しぶりに作るから上手く出来るか分からないけど」
肩を並べて歩くなんて、どのくらいぶりだろう?
そんなことを考えていると、ふと“工事中”の看板が目に入った。
スーパーの裏で通い慣れている学校の近く、それなのに──
「ここって、何があったんだっけ?」
私が言うよりも先にリクが言った。
思い出せないこと、ある。
「当たり前にあっても、なくなると思い出せないよね」
「本当に」
ふと、リクと目が合った。
逸らすに逸らせず、沈黙の時間がゆっくりと流れる──
「…………姉さん、さっきの返事──」
「何が建つのか楽しみだね」
自分でも不自然な誤魔化し方だったと思う……
私も早くリクに伝えたい!
なのに──……
言えないのは……もしかして……
幸せすぎるから──?
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