Doll 21- continuous rain




頭の中に入ってくるモノクロの映像。

部屋いっぱいの人形。
その真ん中、机に突っ伏して寝てる男性。

“アイリス、持ってきたよ”
男性に声を掛ける女性……

男性の悲鳴にも似た雄叫びと共に燃えていく人形達……


「なに……今、の……」


“アイリス”ってどこかで聞いた気がする──?

それに彼を呼んだ女性…………どこか私に似てた?
背中越しなのにそんな印象を受けた。


“怖い”──
身体中がそう感じていた。


「姉さん?……来てたんだ」


突然の声に本を後ろ手に隠した。


「り、リク?……補習は?」
「今日はもう終わり。姉さんこそ、ずっといたの?」
「ずっとって……え?」


時計を見ると、驚くことに2時間は軽く過ぎていた。


「もしかして、本」


話しながら近付く、リク。
自然と後ずさる足。


「たくさんあって……まだ見付けられなくて」
「ありがとう、姉さん──」


背中に壁が当たった。
その直後、リクの手で逃げ場を塞がれる。


「リク……?」
「ずっと、さがしてくれてたんだよね」
「見付けられなくてゴメン……」


嘘をついた。
本を見付けたことを言おうと思えば……言えたのに。
言わなかった──


「明日探せばいいよ。もしずっと見付からなくても構わない。存在してるかも定かじゃないしね……って、話逸れたね」


リクは溜め息ひとつ、窓の外を見つめながら呟く。


「……母さんからも、あの人からも聞いた。ずっと僕を捜してくれてたって」
「捜したよ……嘘だって…………信じられなくて、信じたくなくて……もう無理だって……でも──」
「今、ここにいる」
「うん……」
「あの人のお陰で僕は戻ってこれた」
「……あの人?」
「神様、なのかな?」
「何それ」


吹き出して笑うと、つられてリクも笑った。


「やっぱり、リクだね」
「だから他に誰がいるのさ」
「ハルクに一言いわなくちゃ!  奇跡、起きたんだって。あ、これもリンネの力なのかな?」
「……姉さん」
「え──」


名前を呼ばれ、振り向くとリクに抱き寄せられた。

「どうしたの、リク?」
「……誰にも渡さない」


その言葉と共にリクと唇が重なった──

キスの直前、リクは“嫌なら拒否して”と耳元で囁いた。
その後、短い時間が流れた。
それは私が拒否するには十分な時間。
でも……私は受け入れた。

──これって私の恋は実ったの──?

ゆっくりと流れる時間。
持っていた本は私の手を滑り落ちていく──





Doll 21- continuous rain....END....
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