Doll 21- continuous rain
「セツナを見たってマジかよ」
外に出るとハルクが当然のようにいた。
「間違いないと思う。ママは職業柄、人の顔を覚えるのは得意だから。でも誰と一緒だったのかは……」
「行きゃ分かる」
私とハルクは公園へと急いだ。
──が。
公園はもぬけの殻だった。
「遅かったか。帰るぞ」
「近くにいるかも」
「なら近いうちに会える」
「どうでもいいの?」
「目的は同じだからな」
「そう……だけど」
「今は自分の身も心配しろよな」
「分かってるけど──」
「見付けたぜ、ハルク!」
声の主はリゼルだった。
彼の右手の拳からは血が滴っていた。
「面、貸せよ」
「アリスを送り届けたらいくらでもいいぜ」
「俺も行く」
家までの道のりは、とても長かった。
無言の中で時折、混ざり合う視線。
誰も言葉を発しない。
私自身、この二人と何を話せばいいのか分からなかった。
「アリス…………悪かったな」
家に着くと、リゼルが言った。
「俺さ……初めてなんだ。だから……どうしたらいいか……正直、分かんねぇ……」
「……リゼル?」
「これからもお前のこと、傷つけると思う。けど━━」
「ありがとう、リゼル」
「……ッ…………なんで、“ありがとう”なんだよ、テメェは」
「変、かな」
「……いや、お前らしいわ」
“お前らしい”は、ハルクとリゼルの声が重なった。
「何、会話に入ってんだよ!」
「らしくない言葉にピリオド打ってやったんだろーが 」
「らしくなくて悪かったな」
「うおッ、トリハダ立っちまったじゃねェかよ」
「……テメェ、やっぱりぶっ殺す!」
「もうやめなよ、二人とも」
「煩せぇ。男の喧嘩に口出すんじゃねェ!!」
二人、また口を揃えて言うと喧嘩しながらどこかへ行ってしまった。
「……結局は仲がいいってことなんだよね」
溜め息ひとつ、私は家に入る。
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