Doll 2-Words that I wanted to convey
「離して! クラリスの誤解を解かなきゃ……」
「落ち着けよ」
私はハルクの手を振り払って言った。
「どうして、あんな事をしたのよ!」
「あん?」
「ハルクが……あんたがあんな事しなければ──」
こんな事を言いたいんじゃない……
なのに、言葉が……止まらない……
「最低だよ……」
「オレのせい、そう言うのか?」
「そうだよ。ハルクが学校に来なければ──」
パァン──
ハルクが私の頬を叩いた。
「痛っ……」
私はハルクを睨む。
「……あの女の事は、オレのせいでもかまわねェ。だがな、優先順位は考えろ」
「優先順位?……考えてるよ」
「どこが考えてんだよ」
ハルクは私の胸ぐらを掴んで言った。
「ちょ……苦し──」
「お前はまだ、アイツの……Arice・Dollの本当の恐ろしさを知らねェんだよ」
そう言ってハルクは乱暴に手を離した。
私は、よろめきながらハルクを睨む。
「本当の恐ろしさって何よ?」
「…………」
ハルクは答えない。
いや、答える気が無いんだ。
「…………アイツ……捜しに行くぞ……」
そう言ったハルクの声は震えていた。
ハルクとArice・Dollに何があったのだろう……?
知りたい事、知らなきゃいけない事が多すぎる──
「ハルク、待ちなさいよ!」
私はハルクを追い掛ける。
私達が向かった先は、リクのクラスだった。
「リク!!」
ドアを開けると同時に私は叫んだ。
「リクなら──……」
「え?」
私は耳を疑った。
リクのクラスメイトは“リクなら、さっき帰ったけど”と言った気がする。
「今、何て言った?」
「だから、リクなら帰ったって……」
やっぱり、リクは来ていたんだ……
「……リクはいつ来たの?」
「え?」
「だから、いつリクは学校に来たのって聞いてるのよ!」
気持ちが先走って、頭がついていかない……
「か、帰る少し前……」
「オレが感じた時って事だな」
「リクはいつも通りだったの?」
「アイツ、普段から挨拶くらいしかしねーし……」
「そんな事は聞いてない!」
「おい!」
私は止めようとするハルクの手を払った。
「リクは何処に行ったの?」
ハルクは心配そうに私の肩を掴んだ。
「お前……まさか──」
私は“邪魔しないで”と机を思い切り叩いた。
こんな事するつもりなんて無いのに──
「ねえ、リクは何処に行ったの?」
私はリクのクラスメイトに歩み寄る。
「そ、そんなの知ってるわけない──」
「リクは何処?」
「だから俺は知らないって」
「嘘、つかないでよ」
「落ち着けよ」
ハルクが私の腕を掴んで言った。
「邪魔しないでよ!」
「お前が呑み込まれてんじゃねェよ!」
「──っ」
ハルクが私の頬を思い切り叩いた。
“呑み込まれる”って何……?
「お、俺……帰ります!」
リクのクラスメイトは逃げるように教室を出て行った。
「……オレら、踊らされてんな」
「本当は……全部、ハルクが仕組んでるんじゃないの?」
「あん?」
「ハルクがArice・Dollなんじゃないの?」
リクの時といい、今といい……タイミングか良すぎる。
何よりArice・Dollの事をそれほど語ろうとはしないものの、色々と知っているみたいだし……
「フザケてんのか?」
「ふざけてるように見える?」
「…………見えねェな」
私とハルクは睨み合う。
暫くして、ハルクが口を開いた。
「ヤメだ、ヤメ……こんな事してるだけ無駄だ」
「……そうだね」
ハルクへの疑惑はかかったまま。
でも……
ハルクがArice・Dollだったら、どうすればいいんだろう……
そもそも、ハルクの目的は何──?
「…………はあ……ここにも居ない……」
結局……
Arice・Dollは学校中、何処を捜しても居なかった──
ハルクは“明日、出直そう”と言ってどこかに行ってしまった。
私はクラリスが気がかりで、家に寄った。
しかし、話すどころかインターフォンすら鳴らなかった。
「クラリス━━」
私は仕方なく家に向う。
途中、何回か視線を感じたけど誰も居なかった。
何となくだけどArice・Dollではない、そう感じた。
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