Doll 21- continuous rain
「あいつには気を付けろって言ってんだろ」
部屋に戻ってくるなり、ハルクが言った。
彼の不機嫌さが部屋中に充満している。
「見てたの? 最低」
ラッピングを施した、チーズケーキをハルクに投げつける。
「何すん──」
「さっきのお礼」
「あっそ」
ハルクはチーズケーキをパクりと食べて再び口を開いた。
「危なっかしいことばかりすんなっての」
「リクかどうか確かめてたの」
「本当かよ。鼻の下伸ばしやがって」
「伸ばしてない!」
「服も露出しまくってんじゃねェかよ!」
「これのどこがよ!」
アリスの格好は露出というには、明らかに物足りない。
いつもよりも首周りが広いだけ。
「とにかくだ、あいつには近づく──」
「リクのこと悪く言わないで。彼は本当にリクだよ」
「そんなわけねェ──」
「リクのこと、よく知らないくせに」
「お前だろ、それは!」
「どういう意味?」
「そりゃ──……あぁ、よく知らねェよ! けど、今までの事を考えりゃ分かるだろが!!」
「今までとは全然違うじゃない!!」
私の声に共鳴するかのように、遠くで雷鳴。
そして雨が降り注ぐ。
「やだ……さっきまで晴れてたのに……洗濯物、しまわなきゃ」
アリスは慌ただしく部屋を出ていく。
「これはお前の策略か、リク」
「何のことですか? 」
「すっとぼけやがって。いつから立ち聞きしてた?」
「人聞きの悪い……ところで、貴方がハルクさん……ですか?」
「あぁ。こんな形で会うとは思わなかったけどな」
「姉さんとは……どんな関係──」
「お前、本当に何も知らねェのか?」
「…………?」
「オレは思い出しちまったよ……誰だよ、お前」
窓を打つ雨が次第に強くなっていく──
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