Doll 2-Words that I wanted to convey
学校の中に居るとすれば、教室が可能性として高い。
私は校庭を走り抜け、裏門に向かう。
裏門は中等部への近道。
ごく数人の生徒しか知らない。
「…………よ、よぅし……」
私は、気合いを入れてフェンスを掴み登る。
こんな大胆な事は小学生以来……
無駄に緊張してしまう……
「パンツ見えてっぞ」
下から声が聞こえた。
「……スパッツ履いてるから見えません。それに今は急いで━━」
「確かに時間はねェな」
「……へ?」
下を見るとハルクがいた。
「それって、どういう──」
言い掛けた時、強風で砂埃が舞い上がった。
「きゃあっ!」
私は咄嗟にスカートを押さえる。
習慣は怖いと思う。
「アリス、手!」
「手……?」
私の手はフェンスから離れている。
つまり──
「きゃぁぁあああ!!」
私はフェンスから落ちた。
「………………あれ?…………痛くない……」
目を開けると目の前にハルクの顔があった。
「ったく、大胆なのかドジなだけなのか……」
ハルクが私を抱き止めてくれていた。
私もしっかりとハルクにしがみついていた。
ドクン、ドクンと私の心臓は波を打つ。
「あ、ありがとう……」
私は、まじまじとハルクを見た。
ハルクもまた、私を見る。
こうなるとつい意識してしまう……
誰でもいいってわけじゃないのに──
「……アリス」
「な、何?」
ハルクは真剣な表情で口を開いた。
「嫌な空気が漂ってやがる……」
その言葉に私は平常心を取り戻す。
「……私も感じてた。ここにArice・Dollが居るかもしれない」
「!」
私がそう言うと、ハルクは驚きの表情を見せる。
「……お前、まさか──」
ハルクの右手が私の額に触れた。
「ちょっと、熱はないよ」
「ちげェっての」
そう言って、ハルクは私の額を撫でるように指を動かす。
その表情は真剣そのものだった。
「ハル──」
「黙ってろ」
ハルクの顔が近付づいてくる。
私の心臓が再び荒く波を打つ。
私は思わず目を瞑った。
一瞬、ハルクの額と触れた気がした。
「……悪りィ……勘違いだったみてェだ」
「……へ?」
“何が違うの?”
そう聞こうとした瞬間──
「アリ……ス?」
背後から声が聞こえた。
「……クラリス……?」
その声に振り向くとクラリスが立っていた。
クラリスは走ってきたのか息が荒い。
「ク、クラブじゃ……?」
「…………アリスが血相変えて私を捜してるって……」
「え……?」
私の顔から血の気が引いていくのが分かる。
シリアが事実を確かめる為にクラリスに聞いたんだ……
「……それで……校庭を走るのを……見かけて……」
クラリスは私から顔を背けた。
「私が邪魔だったんだね……」
クラリスが呟いた。
「違う!」
「違わない」
「違うの! コレは──」
「どう違うの?……抱き合っているようにしか……見えないよ……」
私は、ハッとしてハルクから離れる。
「クラリス──」
「ハルクくん、カッコいいもんね……みんなに知られたら、大変だよね」
そう話すクラリスの目は虚ろだった。
「クラリス、聞いて」
「のろけ話でもするの?」
「違──」
「ゴメン……私、クラブに戻るから……」
「誤解なの! ほら、ハルクも何か言ってよ!!」
ハルクは、私とクラリスをただ見ているだけだった。
「大丈夫……だよ。私、誰にも言わないから……」
そう言うと、クラリスは目元を押さえて走って行った。
「待って──」
「お前が待てよ」
クラリスを追いかけようとすると、ハルクが私の腕を掴んだ。
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