Doll 20- Words of knife
「っくしゅん!」
「アリス、風邪か?」
「……誰かに噂されてるのかな」
「リゼルの奴じゃねーの?」
「……そう、かな……」
「……悪りィ……あいつにはオレから──」
「大丈夫。自分でどうにかする」
私、今より強くならなきゃいけない。
このくらい自分で解決しなきゃ。
リゼルだって、以前の彼なわけじゃない。
話せば分かってもらえるはず……
「そうかよ。ま、危なくなったらどうにかしてやるよ」
「それって、どこかで見てるってこと?」
「さあな」
「やめてよ! 最低!!」
口ではそう言ったけど、心のどこかでは安堵を感じていた。
「某がいること忘れてまへんか?」
「あぁ、いたんだっけ?」
「やめい! わざとらしいわ!」
ヨイチさんは咳払いすると、別人のように顔付きが変わった。
「残念やけど、お別れや」
「精々するだけな」
「まぁ……一度経験してるから、また会えるかもしれへんなぁ」
「それに一度経験してるって、どういう──」
「言ったやろ、“某もリンネと同じ”やて……」
そういうと彼は呪文らしきものを唱え始めた。
すると、ヨイチさんの姿がゆっくりとリンネと重なっていく──
「どういう事?!」
「リンネと入れ替わるように現れただろ、そういうことらしいぜ」
ヨイチさんは……リンネだったってこと?
それとも別人?
頭が混乱するする。
「ハルクは……知ってたの?」
「少し前に、な。軽く聞かされた」
何か……ヨイチさん…………アサヒさんに振り回されてたのが馬鹿みたいだ。
「リンネ、言うとった。“アリスもハルクもバカみたい”ってなァ。当たっとるね、はは!」
ヨイチさんはリンネにもアサヒさんにも姿を重ねていく。
「わけ……分かんない……っ」
「ええんじゃないですか、今は分かんなくても」
「バカってなんだよ! てかよ、伝言みたいに言うんじゃねぇ!」
「仕方ないやろ。某はリンネであって、リンネじゃないんやから」
「それは……」
「とにかく、あとは話した通りや。リゼルとも契約してるさかい、奴にも力は宿る。仲よぅやるんやね」
リゼルとも契約……?
「ちょ、何であいつが出てくんだよ!」
「奴の思いがそうさせた、言うんかね」
「……あの、よ……オレが力を失わなければ、あんたは──」
「これが某の運命さかいなぁ、仕方ないやろ」
ヨイチさんはニマっと笑うと、清々しいくらいの表情へと変わる。
「おい、ハルク!……男なら躊躇うなよ」
「ッ……言われなくても!」
「ほな。サイナラや」
「あの! リンネに伝えて! 私──」
“ありがとう、大好きだよ──”
「確かに受け取ったさかい」
眩い光に包まれていく。
温かな光は誰かに抱かれているような──
「アリス──」
ハルクに続き、何を言われたのか覚えていない。
……ただ、キスは交わした──
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