Doll 20- Words of knife
学校中を探してもハルクはいなかった。
悶々とする気持ちを抑えながら放課後を待つ。
「アリス、今日はあいつとは別行動なのな」
体育館の裏を通りかかった時、声を掛けてきたのはリゼルだった。
「……あの、よ……一緒に──」
「ハルク、知らない?」
「人の話、聞けよ」
声のトーンが一気に低くなる、リゼル。
「俺はあいつに用はねぇ。それに邪魔する奴も絞めてきた。オカマ野郎は来ねぇ」
「ありがとう、助かる!」
これで心置きなくハルクを捜せる!
「待てよ! 話は──」
「離して! このままじゃ気が済まな──」
「俺を誰だと思ってんだよ、あァ?」
リゼルの目はあの時のものに戻っていた。
瞬く間に脳裏に広がる、フラッシュバック。
「そんなんじゃ女は落とせないと思うぜ?」
リゼルの手を振りほどいてくれたのは、言うまでもなくハルクだった。
「いつもいつも邪魔してんじゃ──」
「一応、お前の為なんだけど」
「はァ?」
「怖がってんの、見りゃ分かんだろ?」
「…………」
「少しはこいつの気持ちも考えてやれよ」
リゼルは唇を噛み締め、俯いた。
その姿を見てハルクは背を向ける。
「ハルク!……話があるの」
「へぇ、告白?」
「誰が!」
「……とりあえず場所、変えようぜ」
「ちょ、待てよ!」
ハルクに手を引かれたまま、暫く無言で歩いた。
「待てって──……アイツは!」
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