Doll 2-Words that I wanted to convey




「何……これ?」


胸騒ぎがする……

まさか、“Arice・Doll”……?


「……学校に居るの……?」

私は、耳を押さえて窓から辺りを見回す。

校庭ではサッカー部と野球部、テニス部が練習している。

向かい校舎……中等部も変わった様子はない。


「……疲れてるだけ……?」


違う。
何となくだけど、そう思った。

そんな事を考えているうちに、頭痛と耳鳴りが治まっていた。


「……行かなきゃ……」


顔を上げると、埃がかった机が目に入った。
スージィが使っていた机だ。

恋人には見れなかったけど、大切な友達だった。
いつも私に笑顔を見せてくれた彼は、もういない──


「…………急がなきゃ……」


もう、誰も失いたくない──


気が付くと、私は走っていた。
頭で考えるよりも早く、体が先に動いていた。

何か出来るわけじゃないけど、何もしないよりは全然いい……
それに、“リク”なら話せば分かってくれる━━


「アリス……お・ね・え・さん」


校舎を出ると、シリアに道を塞がれた。
シリアは相変わらず、男子生徒数人に囲まれていた。


「どいて!  今は、あなたの相手をしている場合じゃ──」
「そう……リクに会いに行くのね」
「違う!」
「何が違うの?」
「私の話を聞いて──」


言い掛けて、言葉に詰まる。

Arice・Dollが校舎に居るとしたら、それはリクだ。
誤魔化す言葉が見付からない……


「話って何?」
「そ……れは……」


口ごもる私にシリアは溜め息をついて言う。


「噂、聞いたんだけど」
「噂?」
「リクとアンタって血が繋がってないんだって?」
「……今は、そんな話をしている場合じゃない──」
「それは、リクが待ってるから?」


私の襟を掴んでシリアは言った。


「リクじゃない」


私はシリアの手を振り払った。


「じゃあ、誰?」
「……クラリス。クラリスに忘れ物を届けに行くの」


私は嘘をついた。


「ふ~ん。本当に仲良いんだね」
「当たり前でしょ。友達なんだから」
「友達……」


そう呟いたシリアは少し寂しそうな目をしていた。


「あなたにも友達がいるでしょう?」
「……友達くらい、当たり前よ!」
「なら……分かってくれるよね」


私は笑顔で言った。

すると、シリアは道を開けてくれた。



「ありがとう」


すれ違い際、私はシリアに言った。

シリアもきっと、私と同じように不安なんだ……


「…………シリア……」


私は立ち止まって、シリアを見つめる。

いつかはライバルになる存在。
リクを想う気持ちは私だって負けてない──

そう心の中で告げて、再び地面を蹴る。



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