Doll 20- Words of knife




「アリス、ちとよろしいか?」


学校へ向かう為、家を出たと同時にアサヒさんに呼び止められる。

ヨイチさんはともかく、アサヒさんはきっとハルクに気がある。
そう思うと、一刻も早く彼女から離れたかった。


「私、急ぐので──」
「リンネ」
「え?」


予期せぬ言葉に足がかたまる。

どうして、アサヒさんの口からリンネの名前が……?


「某もリンネと同じさかい……」
「どういうことですか?」
「ハルクの力を取り戻すん、許可もろとこかと思ってな」
「私の許可なんか……」
「“力なんか戻らなくてもいい!”ハルクは言うとったで?……理由はアリスや」
「な……んで、私?」


一瞬、不覚にもドキンとしてしまった。
でも初めてじゃない。
何度目かのこと……


「つまりや、力を取り戻すちゅーんは一心同体の回復……戦いに身を投じるも同じ」
「そんなの今はまでだって……」
「Arice・Dollは完全体に近づいとりますさかい、今まで以上に危険どすわ」
「それは……」
「まあ、今はリゼル。それに修行しとるセツナもおるわな」
「セツナがどこにいるのか知ってるの?」


アサヒさんはニヤリと笑って答える。


「某を誰や思っとる?」
「……アサヒ……さん?」
「なんてな。古い友人を尋ねた時に偶然、見掛けただけや」
「セツナはどこに──」
「本人が言わへんかったん、某が言えるかいな……話、逸れたな」
「……ハルクは私を傷付けたくないって言ったってこと?」
「せや、な」


それって、あの日……
ハルクがアサヒさんを押し倒していたのと関係があるってこと……だよね?


溜め息1つ、深呼吸1つ。


「一ついいですか?」
「なんやの」
「一心同体、いつかは解除は出来るんですか?」
「絶対に無理ってワケはないやろけど。力を取り戻せば、元通り。くっついたり離れたりて恋愛みたいに都合よくいくかいな」
「……だよね」
「今のままなら、少なくともアリスは傷つかへんな」
「馬っ鹿じゃないの? 私はもう傷だらけよ……」


アサヒさんの話を聞いていて、……腹立ってきた。
どうしてもハルクに一言、言いたい。


「まったく、どいつもこいつも……」



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