Doll 19-First Love
「おいおい、いい加減に──」
「私は本気だよ……ドラ」
「ボクは冗談だって? はははっ、笑えるかよ」
「壊されたくなかったら……離して、彼……」
「パパ命じゃなかったのかよ」
「暇潰し……反応が見たいの」
「はははっ、そりゃいい!……相手はフラップで十分だな」
「殺ス……」
ティーデの表情は一気に殺意に満ちた。
そして、フラップを振り上げ容赦なく──
「喧嘩なら家でやれ」
「あぅ……ッ」
間一髪、ハルクに助けられた。
ティーデはハルクを睨むと静かに消えた。
「ありが……」
「テメェ! ボクの役目を……!」
「モタモタしてたら、どうなってたと?」
「アリスが好きなのか?」
「え……?」
「お前に答える義理はねェ」
「なら……どけよ。恋の障害野郎」
リゼルを突き飛ばしハルクに歩み寄る、ドラージュ。
──違うよ……違う。
「……じゃない……そんなの恋なんかじゃないよ!」
恋は相手を思うこと。
例え離れていても彼のことを──
「……アリス?」
真っ白……
ほんの数日前までは、はっきりと思い出せたのに今は……
……ほんの数日前まで?
毎日、考えていた。
毎日、想っていた……はずだったのに。
「あ……いや……」
この場にいる全員の視線が私に集まる。
「やめて……来ないで!」
引き留める手を振り払って、無我夢中で走った。
通った道も、すれ違った人も見ることなく。
もし……この時、立ち止まっていたら……
運命は変わっていたかもしれない。
Doll 19-First Love....END....
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