Doll 18-Puzzle piece which disappeared




「カップル誕生、めでてぇじゃねーかよ」


かったるそうにリゼルが居間に入ってきた。
私は思わず肩をすくめる。


「……ったな……」
「え?」
「……ジロジロ見んじゃねぇーよ、何でもねぇ」
「ごめんなさい……」
「謝るんじゃねぇよ!」


リゼルは妙に苛立っていた。
やっぱり私のせい……だよね。

でも、何で?
ずっと、リゼルの視線を感じる気がするのは……


「弁解しときましょか」
「当たり前だ」
「いいよ、別に」


その言葉にヨイチは穏やかに微笑み、口を開いた。


「朝日が昇る……すると某は朝日になるんや」
「え? どういう──」
「気になったかいな?」
「いえ、その……訳が分からな──」
「女だよ」


困惑する私を見てハルクが答えた。


「そんで、欲求不満な坊ちゃんは襲っちゃいましたってか?」
「ぶっ殺されてェか?」
「悪いとは言ってねぇだろ、ハルク……それにお前がそいつとデキれば──」
「いい加減にしてよ、二人とも!  ヨイ……じゃない。アサヒさんは服を整えて下さい!」
「別に減るもんじゃなかろうに」
「そういう問題じゃないです!」


私が睨むとヨイ……アサヒさんは口を尖らせながら着物を整え始めた。


「しっかしまァ、ちゃんと嫉妬しおるんやねぇ」
「しっ、嫉妬!? ち、違います! 私は……ただ」
「ただ?」


その先は言葉にならなかった。
嫉妬していたのは事実だったから……
そんな自分がとても恥ずかしくて必死に掻き消す。


「安心しぃな。ハルクの腕を試しとっただけやねんて」
「ムカつくことに人間ってのは弱──」
「弱くないだろ。それはハルク、オメーが誰より知ってんだろ」


そう言って、リゼルは余裕の表情を見せる。


「ったく、情けねぇの。まっさか、お前にそんなこと言われるなんてな」
「事実だろーが」
「うぜっ」
「オメーこそ、うぜぇんだよ」


“微笑ましい”
その思いが沸き上がっていた。

いつの間にハルクとリゼルの会話が落ち着くようになったんだろう?

はじめは二人に対して、恐怖すら感じていたのに。
なんだか懐かしいな。

懐かしさに浸っていると、ハルクと目が合った。


「なに?」


ハルクは私を無視してリゼルの方を見る。


「お前……アリスに──」
「あぁ」
「マジ……かよ」
「好きになっちまったんだから仕方ねーよな」


リゼルに引き寄せられ、強く抱き締められた。

そんなことより、今……


「アリス。これからは俺が守ってやっから」


腕の力とは裏腹に声はとても優しさに包まれている。
手を伸ばせば引き離せるのに、耳に響くリゼルの鼓動が心地よくて……目を閉じた。

“好き”は、ハルクに対しての挑発……だよね?


「離れろよ。アリス、嫌がってんだろ!」


ハルクがリゼルと私を引き離す。


「あ、リゼル……好きって……」
「本気にしたのかよ、忘れろ」
「何、ごちゃごちゃ話してんだよ、リゼル!」
「さぁな、勝手に気になってろ」
「気になるかよ、くだらねェ!」


二人は外でケリを付けると言って、出て行った。


「ずっと某とやり合っていはったのに元気やんなぁ」
「え……」
「それだけ必死なんありまへん、アリスはん?」


分かっていることだけど、言葉にされるとより突き刺さる。
私はいつも……守られてるばかりだ。



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