Doll 17-Sound of rain to fall in a heart





「ごっそさん。おおきになァ」


一風変わった着物を着た男は満足そうにお腹を叩いた。


「それで、お前……力──」
「方法、あるでぇ」
「ハルク。コイツを信用すんのか?」
「……少しでも可能性があるなら、な」
「やめとけ。男なら拳で──」
「見ただろ? オレは……普通には戦えねェんだよ」


ハルクは目を伏せて悔しさを押し殺す。

“力”にそこまでこだわる理由が分からない。


「方法教えてくれ! 頼む──」


ハルクの言葉が止まる。


「ッ……寝てやがる」
「ふざけた野郎だぜ、全く」
「お前もだ、リゼル」


リゼルは、ソファーで横になっている。
そんな彼にママは泊まっていくように言った。
断ると思いきや、リゼルは頷いた。


「アリスに話があんだよ」
「さっさと話して帰れ」
「テメェにはねェんだよ、ハルク」
「ちょっと、ケンカは──」
「よくないわなァ」
「やっと起きたか。さっさと方法を教えやが──」


言いかけたハルクは青ざめて、わなわなと震えている。


「どうし……きゃっ!」


男はハルクの腰を抱いて、うっとりしていた。

私とリゼルは思わず口を押さえる。


「てっ、テメ……!  オレにそんな趣味は──」
「某にもあらへん」
「なら、とっとと!」
「せやけど、離れられへんみたいやァ。アイツのせいやな」
「なにワケ分かんねェこと──」
「今、何時や?」


時計を見ると、夜中の3時を回ろうとしていた。


「どーりでやんな」
「一人で納得すんじゃねェ!  おら、さっさと離せ!!」
「某、今はギリギリでヨイチなんねんけど……」
「だぁっ!  顔近付けんじゃねェ!!」


ヨイチと名乗った男が女だとしたら、ハルクと恋人同士に見えなくもないけど……
ラセンがいなくて良かったかも……
そういえば、ラセンはどこに行ったのかな?
……胸の奥がざわめく。


「おい、アリス。俺ら邪魔みてぇだし行くか」


リゼルに腕を引かれ、居間を出て行く。


「おい……お前の部屋はどこだ?」
「え……?」
「話、あるって言っただろ」
「う、うん……」


咄嗟に思い付く言葉もなく、私は自分の部屋にリゼルを案内する。



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