Doll 17-Sound of rain to fall in a heart
「何だったんだ? アイツ……おい、詳しく──」
私とリゼルが振り向くと、ドラージュもいなかった。
「ちッ、逃げやがったか」
と、リゼルと目が合った。
私達はお互いに目を反らす。
相手は私じゃないのに……ドキドキするのは何故?
「って、おい! ハルク! いつまで寝たふりしてんだよ! おい、ハルク──」
「ちょっと、怪我してるんだからそんな乱暴に……」
言い掛けて言葉を呑み込んだ。
ハルクの肩が小刻みに震えていたから。
“一心同体”じゃなくても……ハルクの気持ちが、なんとなくだけど分かるよ──
「らしくねぇんじゃねーの?」
「リゼル!」
「お前、俺様に言ったよな! 拳でアリスを──」
「こんなにも無力さを思い知らされて出来るかよ!」
「甘えんじゃねぇぞ! 俺はな、お前にッ!」
「やめてよ、二人とも!」
ハルクとリゼルは直ぐに殴り合いになる。
怪我をしていてもお互いに容赦なしで、余計に傷を増やす。
止めても無駄、分かってる。
分かってる、でも分からない。
男の人は近くても遠い。見えない壁があるみたいで……
暫くして二人は同時に倒れる。
「大丈──」
「あー……スッキリした」
「ってェな、本気で殴りやがって……」
「俺が手加減なんかするかよ」
「──本当、分からない」
「……アリス?」
「二人は仲良いの? それとも──」
「悪いに決まってんだろ!」
二人が同時に叫ぶ。
それに私は思わず吹き出してしまう。
「えらい仲がええんどすなァ」
「ふぇ……?」
背中から声が聞こえた瞬間、私達三人は腕に包まれるように抱き締められている状態。
ハルクとリゼルの顔がスゴく近くにあって、私は俯く事しか出来ない。
「なァ……力、取り戻したいんやて?」
「お前、なに言って──」
「某はその方法を──」
その言葉は最後まで続かない。
もの凄い音と共に背中に重みがのしかかる。
「どんだけ腹が減ってんだよ!」
叫んだのはハルクだった。
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