Doll 2-Words that I wanted to convey
「ハルク──」
「転校生」
私の言葉を遮ってハルクが言った。
言われてみればハルクは制服を着ている。
「……転校生は職員室に用があるんじゃないですか?」
その言葉に苛立ったのか、ハルクはシリアを睨んだ。
「な、何よ」
シリアは気まずくなったのか去ろうとした。
と、シリアと目が合ってしまう。
「いいボディガードが出来そうね」
そう言って、シリアは満面の笑みを浮かべた。
その笑顔が逆に怖い……
「……お姉さん。また、ね」
シリアは男子生徒達を引き連れて去って行った。
「アリス。彼、知り合い?」
シリアの姿が見えなくなると、クラリスが聞いてきた。
「知り合い、というか……」
私が聞きたいくらいなのに。
「まさか、恋人──」
「それだけは無いな」
私の代わりにハルクが答えた。
「アリス、本当?」
「うん、ただの顔なじみ」
「まあ、そんなもんか」
「……そうなんだ!」
クラリスは頬を赤らめて嬉しそうに言った。
明らかに恋する女の顔だ。
「……よろしくな」
ハルクは微笑んで言った。
ハルクが笑ったのをちゃんと見たのは、初めて。
「アリス──」
と、クラリスは私の手を引っ張って走った。
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