Doll 17-Sound of rain to fall in a heart




通り雨。
太陽が現れると同時にハルクが拳を振り上げる。


「てめッ、アリスから離れ──」
「壊シテ」
「がッ……」


ハルクはいとも簡単に投げ飛ばされてしまう。


「ハル──」
「こんなん何ともねェよ」


そしてまた立ち上がる。


「それよりお前、何者だ? 人間ってのは信じねェぜ」
「ボクは……フラ──」


言い掛けた瞬間にカタカタと震え始める。

嫌な予感がする、どうして──?


「ボクを壊シテヨ。ネェ、ネェ、ネェー!!」
「ぐッ……あがァッ!」
「いやぁっ!!」


子供は容赦なくハルクを殴り、蹴り、噛みつく。


「もう、やめ──」
「ネェ、早くボクを壊シテヨ」


目の前に顔があった。

金縛りにあったかのように動けない。


「ハ……ルク?」
「死んジャッタノカナ? 動カナイネ」
「え──」


ハルクが死んだ?
そんなわけ無い。

ねぇ、ハルク……
起きてよ、ハルク──


「ホラ、早くボクを」
「痛──」


言葉とは裏腹、細い腕で私の首を締め付ける。


「コンナノ……望んでナンカイナイノニ……」


そう言った子供の瞳に涙が光った気がした。
天の邪鬼な言動に本音はあるの──?


「誰の許可もらって出歩いてんだよ、フラップ」
「ア……アァァ……」


フラップと呼ばれた子供は突如、極端に怯えうずくまる。


「大丈夫か、アリス?」
「あなたは──」


保健室での事を思い出して警戒する。

そう、彼は──


「嬉しいぜ、覚えててくれたんだ。ははっ」
「そんなんじゃ──」
「顔に書いてあんぜ」


私、そんなに顔に出てた?


恐る恐る彼を……ドラージュを見る。
と、彼は無邪気に微笑んだ。


「アイツ、フラップってんだ」
「え?」
「性別は謎。ってか、どっちでもねぇってやつ」


淡々と話す、ドラージュ。


「そんで、ボクらと同じように──」
「お喋りがすぎるわよ、ドラ」


私は思わず息を呑む。



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