Doll 2-Words that I wanted to convey
「私は、シリア。シリア・ロース」
名前さえも初めて聞いた。
よく見ると制服もリボン着用。
つまり、中等部の生徒。
彼女、シリアは更に続ける。
「リクを今すぐ返して」
「だから、リクは今──」
「隠してるんでしょ?……それとも監禁してるの?」
「ちょっと、あなた!」
「クラリス。待って」
「でも……」
私はクラリスの前に出た。
「リクの友達かな? 悪いけど、リクは本当に──」
「恋人よ」
「……え?」
「リクから聞いてない? 同じクラスに恋人がいるって」
言葉が耳をすり抜けていく。
「リ……クとは、そういう話はしない事にしてるから……」
……嘘。
恋人がいるなんて話、聞いた事もない。
リクも年頃だから、敢えて言わなかったのかもしれないけど……
「なに動揺しちゃってんの?」
「ど、動揺なんか……」
「いい加減にしなさいよ! 恋人なら家族にいい顔するもんでしょ!」
私の代わりにクラリスが言った。
「その家族の恋人に嫌がらせをしているのは、誰よ!」
「アリスだってリクくんが帰って来なくて心配してるんだよ!」
「いいよ、嘘なんかつかなくても」
「嘘──」
“嘘じゃない”
そう言う前にシリアが言った。
「あ、分かった」
シリアは薄ら笑いをして続ける。
「素直になれなかったせいで、意中の人が死んじゃったから?」
「……!」
ドクン──
私の心臓が大きく鳴った。
「あなたに何が分かるの?」
頭の中は真っ白だった。
手は意志を無視してシリアの襟を掴んでいた。
「ついに本性出したわね……そうやって、リクもイジメてるの?」
「……っ!」
私は悔しくて思わず、手を振り上げた。
「……もういいだろ」
私がシリアの頬を叩くより早く、誰かが私の手を掴んだ。
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