Doll 16-Dora




「いってぇなァ!」
「ごめんなさい」


考え事をしながら走っていると、前から来た青年にぶつかってしまった。


「謝りゃ済むってか? 甘いね」
「本当に……ごめんなさい!」
「あ、ォイ!」


私は逃げるようにその場を後にした。
違和感が残る。
彼をどこかで見たような……
赤い目とポニーテール。
でも、思い出せない。

違う、今はそんな事を考えてる場合じゃないんだ。


「急がなきゃ……」
「ん?」


横断歩道、人混みに紛れて懐かしい髪色を見付ける。


「リンネ……?」


振り返るも、居るわけがない。

目に入ったのは変わった格好をした男性の後ろ姿だった。
リンネと同じなのは髪の色。
ただ、全く一緒じゃない。

やっぱり、まだ信じられない。
目を閉じればいつでも彼女の笑顔があるから──



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