Doll 16-Dora
制服のリボンをキュッと締めて、新鮮な空気を吸う。
それから私は写真のリクに話し掛ける。
「絶対……助けるからね」
少しの可能性を信じると決めたから……
と、窓が開いて太陽の匂いが入ってきた。
「鼻の下伸ばしやがって。時間、いいのかよ」
「そんな顔してない!」
「自分じゃ分かんねェだろーが」
「ハルクじゃないんだから、するわけないでしょ」
「ハァ? オレがいつ鼻の下を伸ばしたんだよ」
彼、リゼルのお陰でいつものハルクに戻った。
「おい、答えろ」
「あ、本当に遅刻しちゃう!」
「おい、待て──」
「悪いけどハルクの相手をしてる場合じゃないの!」
そう言って私は鞄を持って出て行こうとした。
カシャン──
「え……?」
足元を見ると、割れた写真立て。
硝子の破片が私とリクを引き裂くように刺さっていた。
「アリス、大丈夫か?」
「う、うん……」
写真を持つ手が小刻みに震える。
二度目、だよ?……嫌な予感がする。
「アリス?」
「え、あ……ううん、遅刻しちゃうから先に行くね」
写真を、不安を隠すように机の引き出しにしまった。
──大丈夫、だよね?
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