Doll 2-Words that I wanted to convey




私は、明るくなった天井を見つめて溜め息をついた。


「……全然、眠れなかった……」


結局、ハルクは姿を見せなかった。
ハルクは何者なのか、目的は何なのか……
聞きたい事はたくさんあるのに。


「……着替えないと」


制服を取ろうとして躊躇う。
いや、手が震えて動かない……


「スージィ……」


“もうスージィに囚われるのは止めよう”と心に決めて、再び制服に手を伸ばした。


「私、伝えるから……無駄だって分かっていても」


私は、左右の小指と小指を絡めて指切りをした。

そして、制服のネクタイをきちんと締める。


「行ってきます」


私は一人、学校に向かった。
いつもはリクと一緒。
だから一人で登校するのは初めて。

リクの通う夢見ノ宮学院中等部とはグランドを挟んだ向かいという距離にあった。


「アリス、おはよう」
「おはよう、クラリス」


校門の前でクラリスと合流した。
クラリスは、ウェーブがかった蜂蜜色のロングヘアー。
桃色のホッペタは、クラリスのチャームポイントだと思う。


「リクくん、まだ帰ってこないの?」
「うん」


昨日の夜、眠れなかった私はクラリスに話を聞いてもらっていた。

クラリスは何でも話せる友達。
……だからこそ、リクとArice・Dollの話は伏せた。
巻き込むわけには、いかないから……


「私ってばいつもリク、リクってくっついてたから嫌気がさしたのかもだしね」


自分で言っておいて、胸が痛くなる……

リクに嫌われなかったのが不思議なくらい。
本当に嫌われていたんじゃないかって思う。


「やっぱり、そうだったのね」


背後から初めて聞く声が聞こえた。

振り向くと男子生徒達に囲まれて、ツインテールの少女が仁王立ちで立って私を見ていた。


「……誰?」


私は小さな声でクラリスに聞いた。
が、クラリスも知らないらしく首を傾げた。



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