Prologue Ⅱ




「……リンネに?」
「名前は知らねぇよ」
「いつ?」
「三日前。ま、居ねぇなら帰るわ。取り込み中みてぇだし」
「待って。リンネは何て言ってたの?」
「さぁな」
「教えて」
「忘れちまった、はは……残念だったな」
「ふざけんなよ!  あたし等には知る権利があるんだ」


と、ラセンがリゼルの胸ぐらを掴む。


「俺にも黙秘する権利がある」
「意地でも聞き出してやる」
「上等だ」
「やめて、リンネだって──」
「その名前を二度と口にすんじゃねェ!!」


ハルクの拳が向って来る。


「きゃあ──」
「いつから女に手を出すようになったんだよ、王子野郎」


間一髪、リゼルが私を庇ってくれた。


「関係ねェだろ?」
「あぁ、出遅れ反抗期ってやつか?」
「テメェ──」
「何でだろうなァ、今は負ける気がしねぇ……」
「このオレが人間に負けるかよ」
「お前も同じだろ」
「一緒にすんな」
「じゃあ、お前は何だ?」
「オレは──」
「ハルク!!」


ラセンがハルクの言葉を打ち消す。


「人ってよ、生きてるだけで強いんじゃねーの?」


耳を疑った。
まさか、リゼルの口からそんな言葉が出てくるなんて思ってもみなかったから……


「……口だけは達者だな」
「……お前らが教えたんだろーが……」
「御託はいい」
「だな」


ハルクとリゼルは拳を交える。


「やめてよ、二人共!」
「アリス、止めなくていいよ」
「でも──」
「兄貴が居てもこうなってたと思う」
「え?」
「男は拳で分かち合えるって言ってたから……」


そう呟いたラセンは、どこか寂しそうに見えた。
セツナ……今、何処に居るの──?



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