Prologue Ⅱ





「……これでいい……よね」


リンネが居なくなってから三日が経った。

私は箱にリンネが好きだったものを詰め終えようとしていた。
最後は壊れた懐中時計とままごとで使っていたスプーン……


「忘れるからしまうんじゃない……大切だから残すんだよ」


自分にも言い聞かせて蓋をした。
その時、肘が机に当たる。


「痛……」


同時にコトンと何かが落ちた音。
……写真立て。


「嘘……」


家族写真の……リクの所にヒビが入っていた──
取り返しのつかない事をしてしまったという気持ちに襲われる。


「やめて、ハルク!」


ラセンの声……外から聞こえる。
今度は、何──?

カーテンを開ける。
と、小刀を取り合うハルクとラセンがいた。


「離せェェエエエ!!」
「嫌だ!  離したら、ハルクは──」
「何度も言わせんなってんだろうが!」
「一心同体なんだろ? ハルクが消えたら、アリスだって」
「……一心同体、じゃねェかもな」
「え?  でもアリスは──」
「ねぇ、私が何?」
「何でもねェよ……クソ……」


ハルクは、あの日よりも荒れていた。

無理もないと思う──
尊敬していたタスクさんの裏切り。
目の前で奪われた幼い命……
力さえも失った。


「だからって、ラセンに八つ当たり?」
「お前に関係ねェだろ!  コイツはオレの──」
「甘えるのもいい加減にしなさいよ!」


思いきりハルクの頬を叩く。
と、ハルクは小刀を落とした。


「何すんだよ……」
「そうだよ、アリス!  あたしは別に──」
「良くないよ。セツナが居たら……こうしてたと思うから」


ハルクは無言で私を睨んでいた。
言いたい事があるなら言えばいいのに……


「屋根の上で取り込み中かよ」


下を見ると、リゼルが居た。


「チビ野郎いねぇのか?」


あれ……?
リゼルってリンネに会った事あったっけ……


「死んだ」


素っ気無くハルクが言った。


「ちょっと!」
「冗談きついんじゃねぇの?  俺、チビに呼ばれてきたんだけど」



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