Prologue Ⅱ
「……っ」
「パパ、すごい汗……」
ティーデとドラージュは不安げにArice・Dollの顔を覗き込む。
「……大丈夫だよ、ティー。少し懐かしい夢を見ただけだから」
「で、力は戻ったのか?」
「……イマイチだよ」
手の感覚を確かめながら、Arice・Dollは言った。
「“何か”が足りない」
そう言ってArice・DollはGlassを見つめる。
それは闇色に染まっていた──
「“心-イノチ-”かな?」
「パパの為ならボクはなんだってやるよ」
「わたしだって」
「二人ともイイコに育って嬉しいよ」
褒められた二人は幸せそうに笑う。
「で。お前はいつまでそうしている、タスク?」
「……リコリス……元気がないんだ……」
「知るかよ、バーカ。生きてるだけでいいってお前が言ったんじゃないかよ」
「わたしも同感。ね、パパ。リコリスを新しい玩具にしていい?」
タスクは唇を噛み、屈辱に耐える。
「フラップはどうした?」
「ティーデが乱暴に扱ったから壊れたよ」
「ふ……ざけんな……っ」
「あぁ? 何か言ったかァ──」
「下がれ、二人」
「何でボク達が……」
「タスク、リコリスを連れてこい」
その言葉でタスクの表情が明るくなる。
「面倒な男……」
「彼は強いよ」
「それって、ボクよりも?」
「多分ね」
「ヒドイよ、パパ……」
「ドラはこれから強くなるんだろう?」
「おう! ティーデなんか必要なくなるくれぇ強くなってやるぜ!」
「……単純馬鹿」
赤い満月が泣いているのか、しとしと雨が降り出す──
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