Prologue Ⅱ
むかし、昔──
フランチェルペ王国という国の外れに一人の人形師が住んでいました。
彼は毎日、人形を作り……人形を心から愛していたのです。
そんなある日、彼を訪ねて一人の女性がやって来ました。
その女性はとても美しかった。
彼女は言いました、
「私の為に人形を作ってほしい」
と──
人形師は迷う事なく頷きました。
そう、彼は女性に恋をしたのです。
来る日も来る日も人形師は女性を想い、人形を作った。
人形の完成と共に女性への想いも強くなっていく……
人形は完成した。
しかし、人形師の想いがあまりに強すぎて人形は魂を宿してしまっていたのです。
人形師は考えた。
人形と共に思いを伝えよう……と。
人形を受け取った彼女はとても喜んでくれました。
だが、喋る人形は彼女を恐怖のどん底へと突き落としてしまったのです。
彼女には人形の穏やかな表情でさえ不気味にしか見えなくなっていた。
この事がたちまち国中に広がり、人形師は“悪魔”と呼ばれるようになった。
ついには買い物どころか家の外に出る事も許されなくなりました。
すっかり痩せ細り、今にも力尽きそうな人形師の目に入ったのは……
女性の為に作った人形。
彼は人形を思い、人を恨み憎んで永い眠りにつきました。
そして数日後──
誰かの手によって人形師の存在は家ごと消されたのです。
人形師の名前は……Airice・lie(アイリス・リー)──
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