Doll 14ーRipe fruit and spider line




朝、目覚めると空気を重く感じた。

遊び疲れた割に、早く目覚めたから気持ちが重いのかも。
なんて一瞬だけ思ったけど、違うと振り払った。

“明日”という壁が見えた気がした。
「大丈夫」何度も自分に言い聞かせる。
先ず、私が信じなきゃ──


「ご飯には、まだ早いかな……」


時計を見ると、7時前だった。

支度がまだなら手伝おう。
そう思って下に降りた。
そして、リビングの扉に手を掛ける。


「あれ……?」


ドアノブを握る手が小刻みに震えていた。

片手で支えながら、扉を開ける。

朝食の匂いどころか、静かすぎる──


「パパ、ママ……?」
「出掛けた」
「え?」
「いや、出掛けさせたって言うべき?」
「タスクさ──」
「ハルクも直ぐに来る」


と、タスクさんに手を引かれリビングに両足を踏み入れた。

しかし見慣れた部屋ではなく、黒に覆われた空間と化していた。


「何……これ?」
「素敵って言えよ。徹夜したんだから」
「あの──」
「タスクさん、アレが見付かったって本当ですか?」


ハルクが興奮しながら駆け込んで来た。


「うん、ホント」
「何処に……」


ハルクの表情が凍りつく。


「タスクさん……何をするつもりですか?」
「……モノは試し、だ。そうだろ、アリス……ハルク?」


そう言うなり、タスクさんはハルクの鳩尾に容赦ない蹴りを入れる。
いつものような笑顔は微塵の欠片も無い。
彼は、狂喜に満ちていた。


「うぐ……タスクさ……何で……」


ハルクは動揺を隠せない。


「お前、全然弱いのな」
「がは……ッ」


ハルクは意識を手放し、倒れる。
それをタスクさんが支えた。


「タスクさん……何す──」
「直ぐ済む。痛くはないと思うゼェ?……お前等は、な」
「きゃ──」


彼の空いていた片手は私を捉えた。


「離し──」
「おいで、リコリス」
「……待ちくたびれたわ」


現れたリコリスさんはリンネを連れていた。


「ゴメンね、リコリス」


タスクさんは別人のように、いつも通りの笑顔を見せた。


「アリス?……これは一体……」


リンネは戸惑いながら辺りを見渡す。


「ハルク!  どうかしたのか?」


と、ハルクに駆け寄っていく。
同時にリビングの鍵が重たい音を立てて閉まった。


「……メ……リンネ…………」


リンネは此処にいてはダメ──
直感がそう告げていた。
でも声が出ない……


「材料は揃った……な。さァ、生誕儀式の始まりダ」





Doll 14ーRipe fruit and spider line....END....
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