Doll 14ーRipe fruit and spider line
出入り口近くのベンチにラセンは一人、座っていた。
「ラセン。帰るってよ」
真っ先にハルクが彼女に声を掛ける。
けど、何の反応もない。
「おい、ラセ──」
「兄貴が消えた……っ」
そう言うなり、ラセンは泣き崩れた。
「どういう事だよ!」
「分かんない……けど、心にポッカリ穴が空いた感覚で……」
と、恐怖に怯えながら頭を掻きじゃくる。
「声も聞こえない……届かないんだ……」
ラセンの声は掠れていた。
何度も……数え切れない程、セツナを呼んだんだと思う。
「アリス?……兄貴と一緒なんだよね」
私を見るなりラセンは縋りつくようにしがみついてきた。
その姿は、あまりにも痛々しかった。
そう、まるで半身を失ったような──
「あり得ねェだろ……アイツがラセンを一人にしてくなんてよ」
「居ないの? なぁ、兄貴は……居ないのか?」
「落ち着け、ラセン」
「アリス! 兄貴を出してよ……出せぇー!!」
私……この光景を知ってる気がする。
あぁ、そうか……
シリアに言われた事があるんだ──
「ラセンさ、大袈裟すぎ」
言ったのは、タスクさんだった。
「つぅか、リコリスが起きるだろ」
「タスクさん……そんな言い方は──」
「恋人のお前が甘やかして、どうすんの?」
その言葉にラセンは口を押さえて泣くのを堪えていた。
自分のせいでハルクの事を悪く言われたくないんだと思う。
その気持ち、私はよく分かるよ……
「タスク……セツナは帰って来るよね?」
リンネが不安そうにタスクを見上げる。
「心配はいらないよ」
「じゃあ、遊んで待っていればいいな!」
と、リンネはラセンの手を握った。
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