Doll 14ーRipe fruit and spider line
「長い……」
「まだ、頂上手前みたいですよ」
「待たされるって、辛いんだけど」
「タスクさんは、ずっと待っていたじゃないですか」
「好きで待ってたワケじゃねェもん」
と、悲痛な表情でアリスとリコリスが乗っているゴンドラを見つめる。
「あの時間に比べたら短いじゃないですか」
「時間云々じゃねェし……気持ちが離れてくのが怖いんだよ」
「それだけは無いと思──」
「リコリスの何を知ってんだよ、バーカ」
「それは……」
「…………」
ドォンー!
沈黙を消すかのように花火が打ち上がった。
「……何だよ、人が折角──」
タスクは花火を睨む。
と、彼の瞳の中で花火と観覧車が重なった──
「……まさか……ね」
「どうかしたんですか?」
「……いんや」
「何か、嬉しそうだから」
「そ?……まぁ、勘違いじゃなければ嬉しいけどね」
そう言って、タスクはハルクに背を向ける。
「何処に──」
「便所って言ったら信じる?」
「え──」
「アッハハハ!……嘘」
タスクの冷笑にハルクは戸惑う。
「ねぇ、リコリスを頼んだよ」
そう言って、手をひらひらと振りながら去っていく。
「タスクさん……? 今、気持ちが離れてくのがって……」
ハルクのこめかみを静かに汗が伝い落ちた。
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