Doll 13ーCradle




「あら……お取り込み中みたい……ね」


扉が勢いよく開いたと思ったら、目の前にリコリスさんの顔があった。


「きゃあ!  その、これは……誤解で――」


ハルクを突き飛ばして離れた。


「はっくん、随分と積極的になったのね」
「ご、誤解だつぅの!」
「そうなんです、誤解なんです!」


まだ、ドキドキしたまま心が乱れている。

不思議と、受け入れてしまった自分に罪悪感は無かった。


「浮気はよくねェぜ、ハルク」
「誤解だって言って……」


タスクさんは、「信じられねェぞ」とニヤニヤしながら私達を見ている。


「あぁ、もう!  オレはただ、よろけたコイツを助けただけ」


何で嘘をつくの?
確かに本当の事は……言えないと思うけど。

あれは確かにハルクから抱き締めたのに──


「個室に二人、それが浮気だっての」


そう言って、タスクさんはハルクの胸元を軽くどついた。


「オレっち達みたいな関係じゃないだろ、お前等は」


と、リコリスさんに手を差し出す。


「だから、それは──」
「ラセンが見たらどう思う?」
「それ……は……」


リコリスさんがタスクさんの手を取る。


「アリス。お前もだ」
「はい……」
「安心しろよ。オレっちは言ったりしねェから……多分、な」
「多分って……」
「お前等の弱みを握っとくって意味な」
「タスクってば、意地悪なんだから」


そう言って、リコリスさんはタスクさんの手を離した。


「リコリス?」
「タスク、お願いがあるの」
「何?」
「一周だけ、アリスさんと二人で行ってきていいかしら?」
「嫌だ。」
「お願い、タスク」
「ハルクとむさ苦しく乗れって言うのか?」


タスクさんは不機嫌そうに頬を膨らませる。


「そうじゃないわ」
「じゃあ、何だよ」
「お礼を……ちゃんと伝えていなかったから……」
「オレっちが一緒でもいいじゃんか」
「女同士の秘密の話もあるのよ」
「隠し事すんのかよ……」
「タスク」


リコリスさんは、タスクさんを宥めるかのようにキスをする。

私は咄嗟に視線を逸らした。


「リコ……リス?」
「お願い」
「ちぇ、勝手にしろよ」


タスクさんは頬を赤く染めたまま私達を見送る。

ハルクとは目が合ったけど、お互いに直ぐ逸らした。



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