Doll 1-Heart that failed
「パパ、ママ──」
“おかえり”を言う前にママが泣き崩れた。
パパは、ママを支えながら私を見て言った。
「アリス、すまない…………」
私は、涙を堪えて首を横に振る。
そして、絞り出したような声で聞いた。
「……リクは見付からなかったんだね……?」
「あぁ……どこにも……居なかった…………」
パパの声は今にも消えそうだった。
「……事件に巻き込まれて……リクはもう……リクは…………っ」
ママは、気が動転していて見ているのも辛い……
「大丈夫……大丈夫だよ」
私は、パパとママに……
自分に言い聞かせた。
そして、パパとママを抱き締めて言った。
「リクは……帰ってくるよ……」
リクは生きているんだから……
「だから、帰ってきたら……笑って“おかえり”って言おうね」
「…………アリス?」
「……おかえりって…………言うんだ……っ」
私は、泣いていた。
ママも泣いてた。
パパは、そんな私とママの背中を泣きやむまでずっと優しくさすってくれた。
温もりを感じる。
気持ちが落ち着いて目を開けると、ママも泣き疲れてソファーで眠っていた。
「落ち着いたか?」
「うん、ありがとう」
目の下が痛い……
でも、だいぶスッキリした。
「もう大丈夫だから……」
私は笑ってみせた。
パパは笑って私の髪をクシャクシャした。
「あのね、パパ……」
「ん?」
「あの………………ううん、やっぱり何でもない……」
言えない……
言えないよ……
「そうか。いつでも話したい時に話せばいいさ」
「…………ありがとう、パパ……」
パパは、“Alice Glass”を信じる?
パパなら、どうする?
私は正直、迷っている。
もし犠牲が必要だとしたら、それが“人の命”だとしたら──
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