Doll 13ーCradle




「ったく、なんてザマだよ」


その声に零れそうになった涙を拭う。
……顔は見れない。


「ハルク……あ、ラセンは?」
「アイツ、調子に乗りすぎで酔ったみてェでダウンしてる」


と、ハルクは私の隣に座った。
咄嗟に少し距離を取る。


「傍にいてあげなきゃ」
「オレの勝手だろ」


気付いてよ……
一緒に居たくないって。


「……恋人じゃない」
「面倒くせェ。セツナとリンネも居るし」


セツナが血相を変えて走って行ったのって……

懐かしいな。
リクがそうだった。
言葉にしなくても少しの変化に気付いてくれて……
“姉さん”って、いつも──


「悪り……アイツ、お前を置いてったんだよな」
「ハルクこそ」
「あ?」
「ラセンの──」
「ん~、まぁな」


誤魔化したり、濁したりしない。
それが少し辛く思えるのは、何でだろう……


「お前は……セツナの事──」
「好きに見えたんだ」
「……それは……」
「馬鹿……っ」


何でそう言ったのかは分からない。


「誰がだよ!」
「ハルク以外に誰がいるのよ!」
「自分がいんだろ、自分が!」
「そっか……そう……だね」
「お前、泣いて──」
「馬鹿だね、私……八つ当たりして……ごめん」
「アリ──」
「ごめん……ごめんなさい……」


涙がポロポロと落ちていく。
ハルクに見られるなんて最悪だよ……


「何、泣いてんだよ」
「えへへ……情けないよね」
「おい──」
「ラセン」
「へ?」
「心配じゃないの?  恋人でしょ」
「別に心配なんか──」
「私は心配。だから行くね」


泣くとスッキリするって、本当。
泣き顔……見られたのは複雑だけど。
前、向かなきゃね。


「待てよ」
「セツナとリンネの事も心配──」
「待てって言ってんだろ!」


立ち上がった腕は逃げ出す事が出来なかった。

ハルクがそれを阻止したから。


「……離して──」
「アリス」
「……何?」
「アレ、乗らねェ?」


そう言って、ハルクが指差したのは観覧車だった。


「嫌だよ……」


乗るのは家族か、恋人──


「勘違いすんな。お前がまた、泣きそうだから言ってんの」
「もう泣かないってば」
「悲しい涙よか、感動で泣けよ」


そう言うと、ハルクは私の腕を引いて歩き出した。


「ちょ、離しなさいってば!」
「少し黙ってろよ、泣き虫」



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