Doll 1-Heart that failed




「“Alice Glass”は、お前の両親の中にある可能性も無くはない」
「パパかママに?」


ハルクは小さく頷いて続ける。


「もちろん、リクの中にあるかも知れない……だとしたら最悪だな」
「どういうこと?」
「Arice・Dollとの共存となると、どちらかが破壊される」
「それって……」
「力が弱い方が破壊されるって事だな」
「じゃあ、確かめないと」
「待てよ」


立ち上がろうとした私の腕をハルクが掴んだ。


「リクとは限らねェだろ……」

「だからこそ確かめないと!」
「……どうやって確かめんだよ」
「それは……」


ハルクの言う通り確かめようが無い……


「それに、“Alice Glass”の持ち主じゃないヤツのを取り出してしまったら……」


ハルクは、一呼吸を置いて続ける。


「……そいつは死ぬぜ」
「“心ーイノチー”と同じように取り出すの……?」
「さあな」
「さあな、って……ここまで話しておいて──」
「オレだって知らねーよ!!」


ハルクがいきなり声を荒げた。

私は思わず肩をすくめる。


「…………悪りぃ……」


ハルクはそっぽを向いて呟いた。


「……ううん……私も無神経だったし……」


“Alice Glass”には、まだ何か秘密があるような気がする。
ハルクの態度を見て、何となくだけどそう思う。

そもそも、“Alice Glass”だって人にとって大切なものかもしれない。

仮に、その人から“Alice Glass”を取ってしまったらどうなるんだろう?

もしかしたら──


「ソイツは死ぬ、とか考えてんじゃねェよな?」
「……え、違うの?」
「分かんねェけどよ……」
「じゃあ、何の根拠あって──」
「何となくだよ。お前こそ、何で死ぬことばかり考えてんだよ!」
「……そうだね……」


ハルクの言う通りだった。
何もかもを“死”に繋げて考えているのは私だ。
きっと、スージィの事を意識し過ぎている。

深呼吸を一つ、気持ちを切り替える。


「生きている、それに越したことはないよね……?」


答えは分かりきっている。
少しでも不安を安心に変えたくて声に出した。


「あったりめェだろ」


ハルクは呆れるように言った。


「だよね……そう……だよね!」


なんでかな。
ハルクが言うと、安心する……
気休めかもしれないけど。

それにしても、ハルクは一体、何者なんだろう?
他人事のはずなのに、時々……自分の事みたいに反応する……


「あのさ、ハルクって──」
「しッ。誰か帰ってきた」


と、パパの声が聞こえる。

私は、部屋を出て居間へ向かった。


ドアを開けて入ってきたパパとママは、弱り切っているように見えた。



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