Doll 12-Distance to shrink, love to fade away
「……おい、何してんだよ」
「ハルク」
頭を押さえながらハルクは体を起こす。
「婿が起きたぞ」
「ハルク、大丈夫か?」
「あぁ……お前は大丈夫なのか、ラセン」
「もうバッチリだ!」
そう言いながら、ラセンはハルクに抱き付く。
ハルクもまた、ラセンを受け入れるように抱き締めた。
……何でだろう、モヤモヤが立ち込める。
「つぅかよ、セツナ」
「ん?」
「いつからアリスとそんな関係になった?」
その言葉に我に返る。
私は、セツナに抱き締められたままだった。
離れようとすると、セツナの腕の力は強まる。
「そんな関係とは、こういう事か?」
「え──」
セツナの顔が近付いてくる。
「嫌がらせなら、やめろ」
止めたのはハルクだった。
「嫌がらせではない」
「じゃあ、何だよ」
「どうだっていいよ、ハルク」
「良くねェ!」
「なら……いっその事、二人がくっつけばいい」
痛く突き刺さる言葉だった。
私が好きなのは……リク、なんだから──
「言うようになったな、ラセン」
「ふざけんな」
「あたしは真面目。兄貴にその気があればね」
「……嫌いでは無い顔だ」
「何だよ、それ」
「どこか彼女にも似ている」
ラセンが、まじまじと私を見て頷く。
「では……本気になってみようか」
「おい、セツ──」
「待ってよ! 私の気持ちはどうなるの?」
「問題はないだろう」
と、セツナの手がそっと頬に触れる。
「出たよ、兄貴の問答無用」
「やめろって言って──」
「なんだ、この状況は……」
全員が下を見る。
リンネが目を輝かせながら私達を見上げていた。
「あたし、誤解してたの?……アリスとハルクはてっきり……」
「これも違う──」
「リンネ。あたしとハルクが恋人なんだ」
「そう……なのか」
「何よ。信じられないってワケ?」
ラセンは不機嫌そうにハルクに向き直る。
そして──
「お、おい! ラセ……ン──」
ハルクに強引とも言えるキスをした。
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