Doll 12-Distance to shrink, love to fade away
「もう、傷は平気なの?」
「当たり前だ。お前如きと一緒にされては困る」
セツナ、ラセン……
あんなに傷だらけだったハルクまでも、次の日には怪我が治っていた。
けど、ハルクとリンネはまだ目を覚まさない。
「アリス、あんたはどうなの?」
「私も大丈──」
「正直に言いなよ」
「怪我も何も、後ろに隠れてただけ──」
「兄貴。アリスはあたしを庇ってくれたんだ」
「信じられないな」
「これが証拠」
「きゃあっ!」
ラセンが背中の傷を見せようと服を捲る。
「な、何するの!」
「口で説明するより見せた方が早いから」
「だからって……」
私は恐る恐るセツナを見る。
「……礼は言おう」
そう言って、セツナは目を伏せた。
「しかし……」
「何……?」
「……いや、痛みは無いのか?」
「う、うん……」
「そうか」
と、セツナに抱き寄せられた。
「あの──」
「兄貴、何してんだよ!」
「ラセン。アリスの傷は一生消えないだろう……」
「え?」
「それが人間……脆い生き物だ」
そっと、セツナの手が傷に触れる。
その手は怖いくらいに冷たかった。
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