Doll 11-If a pain turns into strength
「リンネ、これは……」
「疲れた。少し休むね」
私は倒れるリンネを支える。
「大丈……あ、寝てる……」
「……よく分からねェけど。サンキューな、リンネ」
そう言って、ハルクはリゼルと対峙する。
「チェ……振り出しじゃねぇカ。まァ、何度やろうが同じだけどナァ」
「同じ手を食らうかよ!」
と、ハルクは手を空へと伸ばす。
剣を出すつもりかもしれない。
しかし──
「……がぁっ」
ハルクは膝をついて蹲る。
「何だよ。傷口が塞がったダケカ」
と、リゼルはハルクの髪を鷲掴みして持ち上げた。
「ハルク……」
痛みに耐えながら、顔を上げる。
「アリス! 動くんじゃね……ェ……」
リゼルの手はハルクの喉元に添えられた。
「でも──」
言い掛けたその時、リゼルに異変が起きた。
「ウガ……俺、一体……?」
と、ハルクはリゼルの手を払い酸素を得て咳き込む。
「ハルク!」
「大丈夫だ……それより」
ハルクの視線を追ってリゼルを見る。
「あ……何だ?……おわぁ! 血?」
リゼルは辺りを見回し混乱の表情を浮かべる。
「正気に戻ったみてェだな……」
「何、言って──」
「今……助けてやっから」
と、ハルクがデコピンを構える。
そしてリゼルの額に触れた。
瞬間、リゼルが……笑った。
「アヒャ……死ねよ、ハルク」
「がぁぁあああ──」
ハルクは思い切り地面に叩きつけられた。
「トドメだ」
振り上げられたリゼルの手は微かに震えていた。
その震えは次第に大きくなっていく。
「俺は……アイツと……同じになりたくねぇ……」
「アイツ?」
「うっ……あがっ……邪魔スルナ……ざけん……な」
リゼルは苦痛に顔を歪める。
それは精一杯、自分自身と戦っているようにも見えた。
「リゼル……」
「うぁぁああああ──」
リゼルが雄叫びをあげた。
と、頭の中に何かが流れ込んで来る……
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