Doll 11-If a pain turns into strength




怖い──
失う事が……怖い。
スージィがリゼルなら、ハルクは──


「邪魔者は消えタ」


ハルクは、飛び掛るリゼルをギリギリでかわした。


「なんつー……速さだよ」


無傷じゃない。
ハルクの服は裂かれ、胸部に滲み出る三本の爪跡があった。


「あっはヒャッハァ!!」


狂ったように笑いながらリゼルはハルクを後ろから羽交い絞めにする。


「がっ……」
「容赦なんかスルカ……容赦……」


と、リゼルは自身のネクタイ代わりに巻かれている鎖をハルクの心臓部にあてがう。
先の割れている鎖は今にも彼の肌を傷付けようとしていた。


「アリス、ハルクが……」


“ご馳走様……とても、マズカッタヨ”
あの日、リク……Arice・Dollはそう言ってスージィの“心-イノチ-”取り出してを食べた──


「や……リク……やめ……」
「アリス?」


リンネが私を揺っていた事にも気付かなかった。
意識は完全にリゼルとハルクに、過去に──


「お前、何を……あぁぁあああ──」


あてがわれた鎖がハルクの皮膚に食い込む。
グイグイ、グイグイ……とハルクの体は鎖を受け入れる。


「うぅ……あぁぁ……」


ハルクは悲痛の声と共に項垂れる。
リゼルによって倒れる事さえ許される状態じゃない。


「シネ、シネぇ!  あひゃァァァああああハハハァ!!」


狂気に笑い、リゼルはハルクを痛めつける。
悲痛な叫びを上げていたハルクだったが次第に動かなくなった。


「アリス──!」
「え?……あぁああっ」


リンネの声とハルクの受けた痛みの一部が私を現実へと引き戻した。
じわじわと広がってくる痛み……立っていられない……
視界が霞む──

この前以上に痛み……リゼルにArice・Dollの力が宿っているから──?


「アッタ……」


その声にリゼルを見る。
と、リゼルはハルクの心臓部に手を入れていた。


「まさか……“心-イノチ-”──?」


恐れている事が現実になろうとしていた。



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