Doll 9ーThe day when she was broken
何一つと無い闇の中にリコリスさんが見える。
此処でも彼女は眠っていた。
「リコリスさん、起きて下さい!」
呼びかけ、触れようとした瞬間──
「きゃあっ!」
叩きつけられるような衝撃が体を突き抜けた。
「何……?」
辺りを見渡すと、闇が生きているかのように蠢きリコリスさんを包んでいく。
嫌な予感がして、私は思わず彼女を抱き締めた。
「……っ」
激痛に耐えながら、意識を集中させる。
リコリスさんはタスクさんにとって大切な人。
もちろんセツナやラセン、ハルクにとっても……
私だって少しの可能性があるなら縋りたい──
まだ見付からない、“Alice Glass”……
タスクさんの気持ちは痛いくらいに分かるよ。
彼女を、リコリスさんを救う事が出来たなら……
リクも救えるかもしれない。
少なくとも今は、そう思いたい。
「だから、負けられないの!」
迫りくる闇と対峙する。
と、自分に異変が起きている事に気付いた。
「光……?」
薄っすらとだけど、私自身が放っているような気がした。
「勝てる……かもしれない」
手を振りかざした時だった。
意識が現実に引き戻されていく──
.