Doll 9ーThe day when she was broken




三年前──


「タスク、はっくん。こっちよ」
「な~んで、ハルクも一緒なの?」
「もう……すぐに妬かないの」
「無理。リコリスはオレっちの女だもん」


タスクさんはリコリスに軽く触れるだけのキスをする。

淡い黄色の髪に青い瞳。
彼女は色白で純白の服が似合う女。
対照的な色を持つ二人は、誰が見てもお似合いだった。


「あのさ、そういう事は二人きりの時にやってくれませんかね」
「見せつけてんの。ホレホレ、悔しがれ~」
「何とも思いませんから」
「ちぇ、つまんないの」


リコリスと一緒にいるタスクさんは、いつも幸せそうだった。


「それで、オレに何の用?  まさかだけど、イチャイチャ見せ付ける為だけって事ないよな?」
「お前さ……今日が何の日か忘れたって?」
「はっくんヒドい」
「はい?」
「リコリスの誕生日」
「ああ、そうだな。てっきり二人で祝うのかと」
「オレっちだってそうしたかったんだけど、リコリスがどうしてもって言うからさ。仕方なく、ね」
「仕方なくって……」
「ま、昼間だけな。夜は邪魔すんなよな」
「しませんから」
「じゃあ、行きましょう」


そう言って連れて行かれた場所は、ミストフェリコという滝だった。


「ここで何を?」
「リコリスの16歳の誕生日を祝う。お前は黙って見てな」


タスクさんはリコリスの手の甲に口付け、エスコートしながら踊りを披露する。
霧が程よく二人を包む込み、より淡い色を付けた。

その時だった。


「きゃあぁぁあああ──」
「リコリス!」
「どうしたんですか!」
「足に何かが……嫌……助けて……」


一瞬の出来事だった。
滝の中に……黒い霧に包まれたと思ったら、リコリスは眠っていた。
体温を維持したまま、心臓だけが止まった。

今思えば、あれも──


「リコリス……?  おい、何とか言えよ……リコリスー!!」


息を、魂を吹き込むようにタスクさんは何度も口付けを落としたが彼女は目を覚ます事は無かった。


「リコリスー!!!」


タスクさんは空を裂く程の声で叫ぶと気を失った。
その直後に地震が起きた──



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