Doll 9ーThe day when she was broken
「おい! タスクさんが倒れたって?」
乱暴にドアを開けてハルクが入ってきた。
「容態は?」
「大丈夫、寝てるだけ」
「そっか、良かった」
そう言ってハルクは座り込んだ。
相当、焦ってたみたい。
「……」
「…………」
少しの沈黙の後、ハルクと目が合った。
「なに見てんだよ」
「別に見てなんか──」
「アイツ、リンネも見てたよな。ずっと」
「え?」
「会ったのは確かに初めてだった。けど、オレはあの目を知ってる……そんな気がした」
「ハル──」
言いかけたその時、地響き……地震だ。
「きゃあ!」
「アリス、危ねェ!」
ハルクの腕に抱かれる。
私も咄嗟にしがみついた。
顔を上げると、ハルクの唇が触れてしまいそうなくらい近くにあって……
ヤダな……何を考えているんだろう、私。
「大丈夫か?」
「う、うん」
「ただの地震じゃなさそうだな……あの日と同じだ」
地震はゆっくりとおさまった。
「あの日?」
「リコリスが──」
また、“リコリス”?
ハルクとリコリスってどんな関係なんだろう……
気になる……私には関係ない事なのに。
「タスクさんも言ってた。早くしないと、って」
「そっか。まだ囚われているんだな」
「どういう事?」
「彼女、リコリスは生きたまま死んでいる」
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