その他短編
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「あぁ、そういえばお前らショスナトにはもう会ったの?」
「ショスナト?誰ですかそれ」
廊下を歩きながら心がふと藤田を振り向く。
藤田は先程から暴れているゾンビ化した恵比寿を抑えるのに必死で、心と能井から数歩ほど後ろを歩いていた。
「そっか知らねェか。」
「なんかヤバイ奴なんですか?」
「そういう訳じゃ無いけどさ。
とりあえず今日オレらとホールに行った事、ショスナトには言うなよ」
「え?」
心の言葉に藤田は恵比寿の腕を掴みあげながら首を傾げた。
「何度も治すのメンドクセェしなー」
「何の話です??」
心の隣で能井がため息をつく。
藤田は2人の言っている事が全く分からず、依然恵比寿を抑えつけながら後をついて歩く。
すると廊下の向こうから何者かが凄まじい勢いで走ってくる音が聞こえ、心が「あちゃー」と呟いた。
『心さん!!能井さん!!おかえり!!なさい!!!!』
「おーただいま。いい子にしてたか?」
『してませんでしたがバッチリです!』
「何がバッチリなの?」
キキィーッと音を立てて心と能井の前で止まった女が満面の笑みで2人を見上げる。
能井がその頭を撫でると嬉しそうに能井に抱きついた。
「…えーと」
「コレがショスナトね。」
「何となくですが全てを理解した気がします」
「多分合ってるよ」
見慣れた光景だとばかりに能井とショスナトを眺める心。
ショスナトはそんな心に気付き、能井から離れ今度は心の腕に抱きついた。
「オレはいいから。ほら、挨拶しとけ」
『え?あ、なんだお前ら。心さんと能井さんのファンか?殺すぞ』
「違いますし!!?」
「次の標的のカオ知ってったら話聞いてたんだ。まだ聞きたい事もあるし殺すのは無し。」
ジトっとした目で藤田と恵比寿を見るショスナト。
が、少し考えたあと2人に向け手を差し出した。
意味がわからず固まる藤田にショスナトが『握手!』と声を荒げる。
「あ、ど、ども、ヨロシク」
『話す口と頭が残ってたら良いですよね』
「え?」
ショスナトの言葉を聞き返す藤田の片腕が吹き飛んで、後ろの廊下にドンッと落ちる。
藤田はもう一度「え?」と声を出そうとするが、声の代わりに血を吐いた。
足元を転がる藤田の片足。
バランスを崩し倒れると視界の隅で恵比寿が転がる腕に食らいついていた。
「あーあーあー」
「お前ねぇ…」
『私を置いてコイツらとホール行ったでしょ!』
「うわバレてら」
「だからってお前いきなりコレは藤田がカワイソーでしょ」
『!!!庇うんですかソイツを…!!に、憎い、世界が憎い!!!』
藤田が血を吐きながら残った腕で助けをあおぐが、心も能井も面倒臭そうに佐知と話すばかりで藤田に目もくれない。
先程まで藤田に食らいつこうと暴れていた恵比寿も転がる腕を食べるのに必死だった。
「じ、死ぬ…ゲブォッ」
「もー、結局オレの仕事増えるんだぞショスナト!」
『治さなくても死にませんよ!』
「いや流石にそれは死ぬと思うぜ」
能井が伸びをしながら藤田に近寄る。
ショスナトはその隙にも転がる藤田の足を踏みつけた。
「落ち着けって。別にオレら遊びに行った訳じゃねぇのよ?」
『仕事で心さんと能井さんとホールに行けるチャンスを掴み取ったコイツらを生み出したこの世界が!私は憎い!!憎い!!!』
「なんて?」
「ショスナトー、治したんだからもう何もすんなよ」
「ありがとうございます、能井さん…」
『クッッソぉぉぉおお!!』
ホッとした様子で腕をさする藤田を見てショスナトが持っていたナイフを地面に叩きつける。
やれやれといった顔で腰に手を当てる心と、ショスナトの頭を撫でる能井。
ショスナトは撫でられながらも藤田を殺気立った目で睨んでいる。
「……」
『……いつかコロス』
ボソリと告げるショスナトから目を逸らし、未だに落ちた腕を貪っている恵比寿を見て藤田は小さく呟いた。
「ここが地獄か……」
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