2章
あなたの名前
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草木をかきわけ、周囲を警戒し、走って、走って。
追い詰めたその人影に、俺は息を飲んだ。
「…助けて…」
◇
思えば今日は朝から最悪だった。
作戦が開始してから3日目の今日。
先日までの晴天が嘘の様に、まるでバケツの水をひっくり返したみたいな大粒の雨が降り注いでいた。
その天候のせいなのかは知らないが敵に出くわさないまま時間が過ぎていき、休憩を取ろうとした矢先イシュヴァールの武僧に襲撃された。
武僧は強く、俺は隊長と隊員を失った。
せめて相討ちにと思い粘ったお陰か、俺ともう1人の隊員を残し武僧達は森へと走り出していった。
逃げられる。
そう思ったが追わなかった。1人で勝てる相手ではないし、何よりまだ守るべき隊員が残っていたから。
なのに。
それなのにリックは。
唯一生き残った隊員は、武僧を追い森へと入ってしまった。
それで俺も後を追うしかなくて、見失ったりなんだりしながら、なんやかんやで今銃を構えているのである。
本当に、ふざけた話である。
『……』
――構えた銃の先。
そこには、怯えた表情を浮かべた俺と母さんの姿があった。
目を瞑り頭を振る。
そんな訳なかった。有り得ない。
ゆっくり目を開ける。
するとそこには褐色の肌に赤い瞳の女性と、同じく褐色の肌に赤い瞳の少年がいた。
『仲間は?』
「……」
答えない2人。
それはそうだろう。
参った。
当然だ。降参したい。
俺達はイシュヴァール人を殲滅しなくてはならない。
その為にここにいる。銃を構えているんだ。
だがいくら考えても構えた銃の引き金が引けない。
痺れたみたいに指の感覚が無い。
力なんて、絶対入らない。
「助けて…」
『っ』
子供を抱きかかえ、震えて小さくなる母親。
その姿が俺に母さんの姿を連想させる。
母さんとは似ても似つかないのに。
と、母親が子供の手を取り俺に背を向けて走りだした。
『…え!?』
あまりの事に驚き声が出る。
これが母親というものなのか?
…なんて感心しながらふと気付く。
引き金から人差し指が離れていた。
これでは殺す気なんて無いと考えて当然だ。
随分マヌケな兵士に見えた事だろう。
『……ごめんな。』
ふぅ、と息を吐き出し、銃を構えなおす。
こちらを見てくる怯えた眼差しがないだけで、こんなに違うのか。
自分が恥ずかしくなる。
先に子供に照準を合わせ、もう俺は母さんに合わせる顔が無いなぁなんて考えながら、2回引き金を引いた。
雨の中で、水溜まりの上で、2度倒れる音が響いて、硝煙の匂いが雨の匂いに混ざる。
『…俺って最低』
子供を先に撃てば、親を失う苦しみを味わわないと思った。
どうせ、2人共撃つのに。
今日は雨。
俺は、俺の両親を奪った連中と変わらない景色を見上げ同じ匂いを身に纏ってる。
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話重くしすぎて
これは良いのか不安です
添削20250922
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