1章
あなたの名前
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オリキャラ《モイス・フランチェ軍曹。前話でも触れた新人。低身長短気。》
___________
『雨やみませんねー…』
「やまないですね!」
『……』
後ろを歩く男の声に、何度目かの溜め息をついた。
『声大きいって。』
「ハッ!?申し訳ありません!」
『……』
本当に、何度目だろう。
『今日は外回るけどまだ分かんない事もあるだろうし、俺に付いてくれば良いから』
「はっ!」
後ろを振り向かなくても敬礼しているのが分かる。
勘弁してよ、と苦笑していると隣を歩くキンブリーが俺を見てきた。
「相変わらず貴方には従順な犬ですね」
そう言って意味ありげに微笑むと前を向いた。
全くその通りだ。従順だ。俺にだけは。
もう2週間も前になる。
この後ろを着いて歩く男モイス・フランチェが部署に配属されてきたあの日から。
「自分は!ショスナト・クライスラー少尉にお会いする為にここに来ました!」
初めて顔を合わせた時、噂通り背の低い気性の荒そうな男だと思った。
しかしこれから宜しくと挨拶すると、彼は何故か俺に駆け寄り涙目で敬礼してきたのだ。
その後固まる俺をよそに、いつの間にか部内の皆から半ば押し付けられる形で教育係にさせられていた。
声が大きいから何もかもが皆に聞こえるし、隙を見せたら急に泣きそうな顔で見つめてくる。
教育係ってこういう時どうしたら良いんだろう。
『俺ってそんなに尊敬される男だっけ』
これは初日に零した独り言。
だがフランチェは聞き逃さず、まっすぐな目で聞いているこちらが恥ずかしくなってくる程俺の全てを褒めてきた。
これがまたやはり大きな声だったから、同僚達は全部聞いてて今もからかってくる。
仲良し兄弟なんて影で言われる始末だ。
噂なんてアテにならない。
そう思ったが、どうやら俺以外には当たりが強いようで。
同僚や他部署から、食堂で暴れたやら口答えするやら言う事を聞かないやら聞かされる。
それには面倒くせぇ等思ったりもしたけど、一人っ子だった俺には少し新鮮で。
尻尾を振って寄ってくる様は懐いた犬の様で何だか可愛くてしょうがない。
いや尻尾はないのだが。
『フランチェ、車まわしてこい。』
「はいっ!」
ダッ、と雨の中傘も差さず迷い無く走って行く背中。
若さも相まって俺には眩しくも感じる。
あぁ、犬良いな。飼おうかな。
その背中を眺めながら緩む口元を手で隠した。
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20230902添削
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『雨やみませんねー…』
「やまないですね!」
『……』
後ろを歩く男の声に、何度目かの溜め息をついた。
『声大きいって。』
「ハッ!?申し訳ありません!」
『……』
本当に、何度目だろう。
『今日は外回るけどまだ分かんない事もあるだろうし、俺に付いてくれば良いから』
「はっ!」
後ろを振り向かなくても敬礼しているのが分かる。
勘弁してよ、と苦笑していると隣を歩くキンブリーが俺を見てきた。
「相変わらず貴方には従順な犬ですね」
そう言って意味ありげに微笑むと前を向いた。
全くその通りだ。従順だ。俺にだけは。
もう2週間も前になる。
この後ろを着いて歩く男モイス・フランチェが部署に配属されてきたあの日から。
「自分は!ショスナト・クライスラー少尉にお会いする為にここに来ました!」
初めて顔を合わせた時、噂通り背の低い気性の荒そうな男だと思った。
しかしこれから宜しくと挨拶すると、彼は何故か俺に駆け寄り涙目で敬礼してきたのだ。
その後固まる俺をよそに、いつの間にか部内の皆から半ば押し付けられる形で教育係にさせられていた。
声が大きいから何もかもが皆に聞こえるし、隙を見せたら急に泣きそうな顔で見つめてくる。
教育係ってこういう時どうしたら良いんだろう。
『俺ってそんなに尊敬される男だっけ』
これは初日に零した独り言。
だがフランチェは聞き逃さず、まっすぐな目で聞いているこちらが恥ずかしくなってくる程俺の全てを褒めてきた。
これがまたやはり大きな声だったから、同僚達は全部聞いてて今もからかってくる。
仲良し兄弟なんて影で言われる始末だ。
噂なんてアテにならない。
そう思ったが、どうやら俺以外には当たりが強いようで。
同僚や他部署から、食堂で暴れたやら口答えするやら言う事を聞かないやら聞かされる。
それには面倒くせぇ等思ったりもしたけど、一人っ子だった俺には少し新鮮で。
尻尾を振って寄ってくる様は懐いた犬の様で何だか可愛くてしょうがない。
いや尻尾はないのだが。
『フランチェ、車まわしてこい。』
「はいっ!」
ダッ、と雨の中傘も差さず迷い無く走って行く背中。
若さも相まって俺には眩しくも感じる。
あぁ、犬良いな。飼おうかな。
その背中を眺めながら緩む口元を手で隠した。
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20230902添削